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南蛮寺門前

著者:木下杢太郎

なんばんじもんぜん - きのした もくたろう

文字数:15,525 底本発行年:1970
著者リスト:
著者木下 杢太郎
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序章-章なし

登場人物

童子、順礼等        舞妓白萩

千代            伊留満喜三郎

常丸            学頭

菊枝            所化しよけ長順

老いたる男及び行人二三   所化乗円、其他学僧

うかれ男          老いたる侍

永禄末年のこと。 但風俗は必しも史実にらず、却つて今人の眼に親うするものとす。 秋の日、暮がた。 後景は京都四条坊なる南蛮寺なんばんじの高き石垣。 そが中ほどよりやや上手に寄りて門。 その扉開かれてあり。 門内の広場に木立、そを透きてほのかに堂見ゆ。 門前の街道に童子等集る。

童子等。 (唄。)

夕やけ小やけ。

摩訶陀まかだの池の

さんしよの魚は

きらきら光る。

玻璃びいどろのふらすこ

ちんたの酒は

きらきら光る。

鐘が鳴る。 鐘がなる。

寺の御堂みだう

十字のかね

きらきら光る。

わかき姉妹の順礼御詠歌ごえいかうたひながら下手より登場。 姉なるは盲目めしひなり。

姉の順礼 (程よき所に立留り、もの怪しむ気はひ。)何やらあやしい音がするがのう。 この近くに海でもあるかいのう。

妹の順礼 何の、んねや。 京の都には海があるもんかの。

姉の順礼 そんなら河の音か。 そや無けりや風かいのう。 わしや滅相めつさう草臥くたぶれた。 今日の宿はまだかいなあ。

序章-章なし
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南蛮寺門前 - 情報

青空情報


底本:「現代日本文學大系 25 与謝野寛・与謝野晶子・上田敏・木下杢太郎・吉井勇・小山内薫・長田秀雄・平出修 集」筑摩書房
   1970(昭和45)年4月5日初版第1刷発行
   1985(昭和60)年11月10日初版第13刷発行
※底本に見る送り仮名の不統一は、ママとした。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:福岡茂雄
校正:松永正敏
1998年6月28日公開
2006年3月20日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:南蛮寺門前

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