黒手組
著者:江戸川乱歩
くろてぐみ - えどがわ らんぽ
文字数:17,885 底本発行年:1931
(上)顕 れたる事実
またしても明智小五郎の手柄話です。
それは、私が明智と知合になってから一年程たった時分の出来事なのですが、事件に一種劇的な色彩があって中々面白かったばかりでなく、それが私の身内のものの家庭を中心にして行われたという点で、私には一層忘れ
この事件で、私は、明智に暗号解読のすばらしい才能のあることを発見しました。 読者諸君の興味の為に、彼の解いた暗号文というのを先ず冒頭に掲げて置きましょうか。
一度お伺いしたい/\と存じながらつい
好い折がなく失礼ばかり致して居ります
割合にお暖かな日がつゞきますのね是非
此頃にお邪魔させていただきますわ
叮嚀なお礼を頂き痛み入りますあの
袋は実はわたくしがつれ/″\のすさびに
叱りを受けるかと心配したほどですのよ
歌の方は近頃はいかが?時節柄御身お大
切に遊ばして下さいましさよなら
これはある葉書の文面です。 忠実に原文通り記して置きました。 文字を抹消したところから各行の字詰に至るまで凡て原文のままです。
さてお話ですが、当時私は避寒
当時都には「黒手組」と自称する
私の実家は極く貧乏で、私自身もこうして温泉場に来てまで筆稼ぎをしなければならぬ程ですが、伯父はどうして中々金持なのです。
二三の相当な会社の重役なども勤めていますし、十分「黒手組」の目標になる資格はありました。
日頃なにかと世話になっている伯父のことですから、私は何を
そこで、私は早速
(上)顕 れたる事実
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黒手組 - 情報
青空情報
底本:「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」光文社文庫、光文社
2004(平成16)年7月20日初版1刷発行
2012(平成24)年8月15日7刷発行
底本の親本:「江戸川乱歩全集 第四巻」平凡社
1931(昭和6)年8月
初出:「新青年」博文館
1925(大正14)年3月
※「届出」と「届け出」、「富美」と「富美子」の混在は、底本通りです。
※底本巻末の編者による語注は省略しました。
入力:門田裕志
校正:岡村和彦
2016年9月9日作成
2016年11月10日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:黒手組