宮本武蔵 04 火の巻
著者:吉川英治
みやもとむさし - よしかわ えいじ
文字数:183,232 底本発行年:1989
西瓜
一
伏見桃山の城地を
今――
摂津、山城の二ヵ国を貫くこの大河を中心にして、日本の文化は大きな激変に
「どうなるんだ?」
と、人々はすぐそういう話題に興味を持つ。
「どうって、何が?」
「世の中がよ」
「変るだろう。
こいつあ、はっきりしたことだ。
変らない世の中なんて、そもそも、藤原道長以来、一日だってあった
「つまり、また
「こうなっちまったものを、今さら、戦のない方へ、世の中を向け直そうとしても、力に及ぶまい」
「大坂でも、諸国の牢人衆へ、手をまわしているらしいな」
「……だろうな、大きな声ではいえねえが、徳川様だって、南蛮船から銃や
「それでいて――大御所様のお孫の千姫を、秀頼公の嫁君にやっているのはどういうものだろ?」
「天下様のなさることは、みな聖賢の道だろうから、
石は焼けていた。
河の水は沸いている。
もう秋は立っているのだが、暑さはこの夏の土用にも
淀の京橋口の柳はだらりと白っぽく
その石も皆、畳二枚以上の
伏見城の修築だった。
いつのまにか、世の人々に「大御所」と呼ばしめている家康がここに滞在しているからではない。
もう一つの理由は、一般民に、とにかく徳川政策を
今、城普請は全国的に着手されていた。 その大規模なものだけでも、江戸城、名古屋城、駿府城、越後高田城、彦根城、亀山城、大津城――等々々。
西瓜
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
宮本武蔵 - 情報
青空情報
底本:「宮本武蔵(二)」吉川英治歴史時代文庫、講談社
1989(平成元)年11月11日第1刷発行
2003(平成15)年1月30日第40刷発行
「宮本武蔵(三)」吉川英治歴史時代文庫、講談社
1989(平成元)年11月11日第1刷発行
2003(平成15)年1月5日第44刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2012年1月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:宮本武蔵