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福沢諭吉 ペンは剣よりも強し

著者:高山毅

ふくざわゆきち - たかやま つよし

文字数:53,857 底本発行年:1981
著者リスト:
著者高山 毅
底本: 福沢諭吉
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この伝記物語でんきものがたりむまえに

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てんひとうえひとをつくらず、

ひとしたひとをつくらず。」

明治めいじのはじめ、「学問がくもんのすすめ」で、いちはやく

人間にんげん自由じゆう平等びょうどう権利けんりのとうとさをとき、

あたらしい時代じだいにむかう日本人にほんじんに、

みちしるべをあたえたひと

それまでねっしんにまなんだオランダをすてて、

世界せかい通用つうようする英語えいごを、独学どくがくでまなんだひと

アメリカやヨーロッパに三もわたり、

自分じぶんでじっさいにたしかめた、

外国がいこくのすすんだ文化ぶんか思想しそうをしょうかいし、

おおきなえいきょうをあたえたひと

上野うえの戦争せんそうのとき、砲声ほうせいをききながら、

へいぜんと講義こうぎをつづけたひと

福沢諭吉ふくざわゆきちは、ながい封建制度ほうけんせいどにならされた人々ひとびと

ざめさせるのは、学問がくもんしかないと、

けわしい教育者きょういくしゃみちをえらびました。

いま、慶応義塾大学けいおうぎじゅくだいがく図書館としょかんには、

「ペンはけんよりもつよし。」

のことばが、ラテンかれています。

諭吉ゆきち一生いっしょうは、この理想りそうでつらぬかれました。

日本にっぽん民主主義みんしゅしゅぎかんがえるとき、

わたしたちはいつも、

諭吉ゆきちにたちかえらなければなりません。

[#改ページ]

1 勉強べんきょうはごめんだ

びんぼうどっくりをさげた少年しょうねん

なつのはじめのある午後ごごのことでした。

十二、三さいになる少年しょうねんが、九州きゅうしゅう中津なかつ大分県おおいたけん)のまちを、むねをはってあるいていました。 こしに大小だいしょうかたなをさしているので、士族しぞく(さむらいのいえがら)のどもとすぐわかりますが、ふるぼけたふろしきづつみをひだりわきにかかえ、ちいさなとっくりをそのにさげています。 どうやら少年しょうねんは、まちいものにきたかえりのようでした。

町人ちょうにんたちは、さも、ふしぎなものをみたといわんばかりに、少年しょうねんのうしろすがたをゆびさして、ささやきあいました。

「おさむらいのが、まっ昼間ぴるま、どうどうと、びんぼうどっくりをさげて、いものにくるとは、おどろいたな。」

「まったくだ。 ちかごろは、おさむらいも、ふところぐあいがよくないとみえて、一しょう(一・八リットル)どっくりをさげていにみえるが、はずかしそうにほおかむりをして、しかも、のくれがたとか、よるになってから、いにくるというのが、ふつうだからな。」

「まあ、おさむらいには、士族しぞくとしての体面たいめん(せけんにたいするていさい)があるからな。 それを、あのようにどうどうと……いったい、どこのどもだろう。」

町人ちょうにんたちがはなしている、その少年しょうねんは、じりじりとてりつける太陽たいようにあせばんだのか、ときおり、右手みぎてで、ひたいのあせをふきながら、士族しぞくやしきへかえっていきました。

この伝記物語でんきものがたりむまえに

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福沢諭吉 - 情報

福沢諭吉 ペンは剣よりも強し

ふくざわゆきち ペンはけんよりもつよし

文字数 53,857文字

著者リスト:
著者高山 毅

底本 福沢諭吉

青空情報


底本:「福沢諭吉」講談社火の鳥伝記文庫、講談社
   1981(昭和56)年11月19日第1刷発行
   2009(平成21)年2月9日第51刷発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2011年11月28日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:福沢諭吉

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