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古事記 02 校註 古事記

著者:稗田の阿礼、太の安万侶

こじき - おおの やすまろ

文字数:109,893 底本発行年:1956
著者リスト:
著者太 安万侶
著者稗田 阿礼
校訂者武田 祐吉
底本: 古事記
親本: 眞福寺本
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古事記 かみつ卷 序并はせたり

〔序文〕

〔過去の時代

やつこ安萬侶やすまろまをさく、それ混元既に凝りしかども、氣象いまだあつからざりしとき、名も無くわざも無く、誰かその形を知らむ しかありて乾と坤と初めて分れて、參神造化のはじめ、陰と陽とここに開けて、二靈群品の祖となりたまひき 所以このゆゑに幽と顯とに出で入りて、日と月と目を洗ふにあらはれたまひ、海水うしほに浮き沈みて、神と祇と身を滌ぐにあらはれたまひき。 かれ、太素は杳冥えうめいたれども、本つ教に因りてくにはらみ島を産みたまひし時をり、元始は綿※(「二点しんにょう+貌」、第3水準1-92-58)めんばくたれども、先の聖にりて神を生み人を立てたまひし世をあきらかにす。 まことに知る、鏡を懸け珠を吐きたまひて、百の王相續き、劒ををろちを切りたまひて、萬の神蕃息はんそくせしことを やすかははかりて天の下をことむけ、小濱をばまあげつらひて國土を清めたまひき。 ここを以ちて仁岐ににぎの命、初めて高千たかちたけあも神倭かむやまと天皇すめらみこと、秋津島に經歴したまひき。 化熊川より出でて、天の劒を高倉に獲、生尾こみちさへきりて、大き烏吉野に導きき。 ※(「にんべん+舞」、第4水準2-3-4)まひを列ねてあたはらひ、歌を聞きて仇を伏しき。 すなはち夢にさとりて神祇をゐやまひたまひき、所以このゆゑに賢后とまを一〇 烟を望みて黎元を撫でたまひき、今に聖帝と傳ふ一一 境を定め邦を開きて、ちか淡海あふみに制したまひ一二かばねを正し氏を撰みて、とほ飛鳥あすかしるしたまひき一三 歩と驟と、おのもおのも異に、文と質と同じからずといへども、古をかむがへて風猷ふういうを既にすたれたるにただしたまひ、今を照して典教を絶えなむとするに補ひたまはずといふこと無かりき。

一 過ぎし時代のことを傳え、歴代の天皇これによつて徳教を正しくしたことを説く。

二 この序文は、天皇に奏上する文として書かれているので、この句をはじめすべてその詞づかいがなされる。 安萬侶は、太の安麻呂、古事記の撰者、養老七年(七二三)歿。

三 混元以下、中國の宇宙創生説によつて書いている。 萬物は形と氣とから成る。 形は天地に分かれ、氣は陰陽に分かれる。

四 アメノミナカヌシの神、タカミムスビの神、カムムスビの神の三神が、物を造り出す最初の神となつた。

五 イザナギ、イザナミの二神が、萬物を生み出す親となつた。

六 幽と顯とに以下、イザナギ、イザナミ二神の事蹟。

七 鏡を懸け以下、天照らす大神とスサノヲの命との事蹟。

八 安の河に以下、ニニギの命の事蹟。

九 神武天皇。

一〇 崇神天皇。

一一 仁徳天皇。

一二 成務天皇。

一三 允恭天皇。

〔古事記の企畫

飛鳥あすか清原きよみはらの大宮に太八洲おほやしましらしめしし天皇の御世におよびて、潛龍元を體し、※(「さんずい+存」、第4水準2-78-43)せん雷期にこたへき。 夢の歌を聞きて業をがむことをおもほし、夜の水にいたりて基を承けむことを知らしたまひき。 然れども天の時いまだいたらざりしかば、南の山に蝉のごとくもぬけ、人とことと共にりて、東の國に虎のごとく歩みたまひき。 皇輿たちまちに駕して、山川を凌ぎ度り、六師雷のごとく震ひ、三軍電のごとく逝きき。 杖矛ぢやうぼう威を擧げて、猛士烟のごとく起り、絳旗かうき兵を耀かして、凶徒瓦のごとく解けぬ。 いまだ浹辰せふしんを移さずして、氣※きれい[#「さんずい+珍のつくり」、U+6CB4、15-本文-17]おのづから清まりぬ。 すなはち牛を放ち馬をいこへ、※(「りっしんべん+豈」、第3水準1-84-59)がいていして華夏に歸り、はたを卷きほこ※(「楫のつくり+戈」、第3水準1-84-66)をさめ、※(「にんべん+舞」、第4水準2-3-4)ぶえいして都邑に停まりたまひき。

古事記 かみつ卷 序并はせたり

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古事記 - 情報

古事記 02 校註 古事記

こじき 02 こうちゅう こじき

文字数 109,893文字

著者リスト:
著者太 安万侶
著者稗田 阿礼
校訂者武田 祐吉

底本 古事記

親本 眞福寺本

青空情報


底本:「古事記」角川文庫、角川書店
   1956(昭和31)年5月20日初版発行
   1965(昭和40)年9月20日20版発行
底本の親本:「眞福寺本」
※底本は校注が脚註の形で配置されています。このファイルでは校註者が追加した標題ごとに、書き下し文、校注の順序で編成しました。その際、校注は二字下げとしました。
※〔〕は底本の親本にはないもので、校註者が補った箇所を表します。
※頁数を引用している箇所には校註者が追加した標題を注記しました。
※底本は書き下し文のみ歴史的かなづかいで、その他は新かなづかいです。なお拗音・促音は小書きではありません。
入力:川山隆
校正:しだひろし
2013年5月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:古事記

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