源氏物語 05 若紫
著者:紫式部
げんじものがたり - むらさき しきぶ
文字数:29,721 底本発行年:1971
春の野のうらわか草に親しみていとお
ほどかに恋もなりぬる (晶子)
源氏は
「北山の
こんなことを言って勧めたので、源氏はその山から修験者を自邸へ招こうとした。
「老体になっておりまして、
僧の
「それではしかたがない、そっと
こう言っていた源氏は、親しい
源氏は自身のだれであるかを言わず、服装をはじめ思い切って簡単にして来ているのであるが、迎えた僧は言った。
「あ、もったいない、先日お召しになりました方様でいらっしゃいましょう。 もう私はこの世界のことは考えないものですから、修験の術も忘れておりますのに、どうしてまあわざわざおいでくだすったのでしょう」
驚きながらも
源氏はその寺を出て少しの散歩を試みた。
その辺をながめると、ここは高い所であったから、そこここに構えられた多くの僧坊が見渡されるのである。
「あれはだれの住んでいる所なのかね」
と源氏が問うた。
「これが、某
「そうか、あのりっぱな僧都、あの人の家なんだね。 あの人に知れてはきまりが悪いね、こんな体裁で来ていて」
などと、源氏は言った。
美しい侍童などがたくさん庭へ出て来て仏の
「あすこの家に女がおりますよ。 あの僧都がよもや隠し妻を置いてはいらっしゃらないでしょうが、いったい何者でしょう」
こんなことを従者が言った。
源氏は寺へ帰って仏前の勤めをしながら昼になるともう
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源氏物語 - 情報
青空情報
底本:「全訳源氏物語 上巻」角川文庫、角川書店
1971(昭和46)年8月10日改版初版発行
1994(平成6)年12月20日56版発行
※このファイルは、古典総合研究所(http://www.genji.co.jp/)で入力されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。
※校正には、2002(平成14)年4月5日71版を使用しました。
入力:上田英代
校正:Juki、多羅尾伴内
2003年6月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:源氏物語