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ランボオ詩集

著者:ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー Jean Nicolas Arthur Rimbaud

ランボオししゅう

文字数:32,066 底本発行年:1968
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序章-章なし

[#ページの左右中央]

初期詩篇

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感動

私はゆかう、夏の青き宵は

麦穂(すね)刺す小径の上に、小草をぐさを蹈みに

夢想家・私は私の足に、爽々(すがすが)しさのつたふを覚え、

吹く風に思ふさま、私の頭をなぶらすだらう!

私は語りも、考へもしまい、だが

果てなき愛は心のうちに、浮びも来よう

私は往かう、遠く遠くボヘミヤンのやう

天地の間を、女と伴れだつやうに幸福に。

[#改ページ]

フォーヌの頭

緑金に光る葉繁みの中に、

接唇くちづけが眠る大きい花咲く

けぶるがやうな葉繁みの中に

活々として、佳き刺繍ぬひとりをだいなしにして

ふらふらフォーヌが二つの目を出し

その(しろ)い歯で真紅まつかな花を咬んでゐる。

古酒と血に染み、あけに浸され、

その唇は笑ひに開く、枝々の下。

と、逃げ隠れた――まるで栗鼠、――

彼の笑ひはまだ葉に揺らぎ

(うそ)のゐて、沈思の森の金の接唇くちづけ

掻きさやがすを、われは見る。

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びつくりした奴等

雪の中、濃霧の中の黒ン坊か

炎のみゆる気孔の前に、

奴等車座くるまざ

(ひざま)づき、五人の小童こわつぱ――あなあはれ!――

ジツと見てゐる、麺麭(パン)屋が焼くのを

ふつくらとした金褐の麺麭、

奴等見てゐるその白い頑丈な腕が

粘粉ねりこでつちて(かま)に入れるを

燃ゆる窯の穴の中。

奴等聴くのだいい麺麭の焼ける音。

ニタニタ顔の麺麭屋殿には

序章-章なし
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ランボオ詩集 - 情報

ランボオ詩集

ランボオししゅう

文字数 32,066文字

底本 中原中也全訳詩集

親本 中原中也全集 5

青空情報


底本:「中原中也全訳詩集」講談社文芸文庫、講談社
   1990(平成2)年9月10日第1刷発行
   2007(平成19)年1月10日第9刷発行
底本の親本:「中原中也全集 5」角川書店
   1968(昭和43)年4月10日初版発行
初出:「ランボオ詩集」野田書房
   1937(昭和12)年9月15日初版発行
※原題は底本では、「VRES D'ARTHUR RIMBAUD」と表記されています。
※ルビのうち括弧()付きのものは、底本の親本「中原中也全集」編纂者によるものである。
(例)恰度((ちやうど))
※ママ注記のうち括弧()付きのものは、「中原中也全訳詩集」編集者によるものである。
(例)臘((ママ))燭
※(1)〜(2)は注釈番号です。底本では、直前の文字の右横に、ルビのように付いています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:オーシャンズ3
校正:L.P.S.
2009年4月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:ランボオ詩集

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