疾中
著者:宮沢賢治
しっちゅう - みやざわ けんじ
文字数:4,519 底本発行年:1986
著者リスト:
著者:宮沢 賢治
底本:
宮沢賢治全集2
親本:
校本宮沢賢治全集
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序章-章なし
病床
たけにぐさに
風が吹いてゐるといふことである
たけにぐさの群落にも
風が吹いてゐるといふことである
[#改ページ]
眼にて云ふ
だめでせう
とまりませんな
がぶがぶ湧いてゐるですからな
ゆふべからねむらず血も出つづけなもんですから
そこらは青くしんしんとして
どうも間もなく死にさうです
けれどもなんといゝ風でせう
もう清明が近いので
あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに
きれいな風が来るですな
もみぢの嫩芽と毛のやうな花に
秋草のやうな波をたて
焼痕のある藺草のむしろも青いです
あなたは医学会のお帰りか何かは知りませんが
黒いフロックコートを召して
こんなに本気にいろいろ手あてもしていたゞけば
これで死んでもまづは文句もありません
血がでてゐるにかゝはらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだをはなれたのですかな
たゞどうも血のために
それを云へないがひどいです
あなたの方からみたらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと
すきとほった風ばかりです。
[#改ページ]
〔ひるすぎの三時となれば〕
ひるすぎの三時となれば
わが疾める左の胸に
濁りたる赤き火ぞつき
やがて雨はげしくしきる
序章-章なし
━ おわり ━
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