詩ノート
著者:宮沢賢治
しノート - みやざわ けんじ
文字数:21,893 底本発行年:1986
著者リスト:
著者:宮沢 賢治
底本:
宮沢賢治集全集2
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七四四 病院
一九二六、一一、四、
途中の空気はつめたく明るい水でした
熱があると魚のやうに活溌で
そして大へん新鮮ですな
終りの一つのカクタスがまばゆく燃えて居りました
市街も橋もじつに光って明瞭で
逢ふ人はみなアイスランドへ移住した
蜂雀といふ風の衣裳をつけて居りました
あんな正確な輪廓は
恐らくなからうかと思ふのであります
[#改ページ]
七四五 〔霜と聖さで畑の砂はいっぱいだ〕
一九二六、一一、一五、
霜と聖さで畑の砂はいっぱいだ
影を落す影を落す
エンタシスある氷の柱
そしてその向ふの滑らかな水は
おれの病気の間の幾つもの夜と昼とを
よくもあんなに光ってながれつゞけてゐたものだ
砂つちと光の雨
けれどもおれはまだこの畑地に到着してから
一つの音をも聞いてゐない
[#改ページ]
一〇〇一 汽車
一九二七、二、一二、
プラットフォームは眩ゆくさむく
緑いろした電燈の笠
きららかに飛ぶ氷華の列を
ひとは偏狭に老いようし
汽車近づけば
その窓が Ice-fern で飾られもしよう
車のなかはちひさな塵の懸垂と
そのうつくしいティンダル現象
日照はいましづかな冬で
でんしんばしらや建物や鳩
かゞやいて立つ氷の樹
青々けぶる山と雲
髪をみだし
黒いネクタイをつけて
七四四 病院
━ おわり ━
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詩ノート - 情報
青空情報
底本:「宮沢賢治集全集2」ちくま文庫、筑摩書房
1986(昭和61)年4月24日第1刷発行
2005(平成17)年7月15日第12刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、「一〇五八」の「鳥ヶ森」以外は大振りにつくっています。
※日付の区切りと、文字や行の省略を示す際に使われている読点は、底本では中央に置かれています。
※再現の困難な組版情報の一部を、省略しました。
※底本の組版には、折り返しがないために、行末が確定できませんが、各項の日付は、地付きとして処理しました。
入力:伊藤雄介
校正:米田
2012年1月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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