雁
著者:森鴎外
がん - もり おうがい
文字数:73,540 底本発行年:1948
壱
古い話である。
僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している。
どうして年をはっきり覚えているかと云うと、その頃僕は東京大学の鉄門の真向いにあった、
上条に下宿しているものは大抵医科大学の学生ばかりで、その
この男は岡田と云う学生で、僕より一学年若いのだから、とにかくもう卒業に手が届いていた。
岡田がどんな男だと云うことを説明するには、その手近な、際立った性質から語り始めなくてはならない。
それは美男だと云うことである。
色の
容貌はその持主を
「どうせ僕は岡田君のようなわけには行かないさ」と先を越して云う学生がある。
岡田の
壱
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雁 - 情報
青空情報
底本:「雁」新潮文庫、新潮社
1948(昭和23)年12月5日発行
1985(昭和60)年11月15日第76刷改版
1988(昭和63)年8月15日82刷
初出:壱、弐、参「スバル 第三年九号」
1911(明治44)年9月
肆、伍「スバル 第三年十号」
1911(明治44)年10月
陸、漆「スバル 第三年十一号」
1911(明治44)年11月
捌、玖「スバル 第三年十二号」
1911(明治44)年12月
拾、拾壱「スバル 第四年二号」
1912(明治45)年2月
拾弐「スバル 第四年三号」
1912(明治45)年3月
拾参、拾肆「スバル 第四年四号」
1912(明治45)年4月
拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」
1912(明治45)年6月
拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」
1912(明治45)年7月
拾玖「スバル 第四年九号」
1912(大正1)年9月
弐拾「スバル 第五年三号」
1913(大正2)年3月
弐拾壱「スバル 第五年五号」
1913(大正2)年5月
弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店
1915(大正4)年5月
入力:kompass
校正:浅原庸子
2005年10月17日作成
2014年7月28日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:雁