もみの木
原題:GRANTRAEET
著者:ハンス・クリスティアン・アンデルセン Hans Christian Andersen
もみのき
文字数:11,606 底本発行年:1955
まちそとの
「やあ、ずいぶんかわいいもみの木だなあ。」
と、いいいいしました。 けれど、そんなことをいわれるのが、このもみの木は、いやで、いやで、なりませんでした。
つぎの年、もみの木は
小さいもみの木は、ためいきをついて、こういいました。
「わたしも、ほかの木のように大きかったら、さぞいいだろうなあ。
そうすれば、
こんなふうでしたから、もみの木は、お日さまの光を見ても、とぶ鳥を見ても、それから、あさゆう、
やがて冬になりました。 ほうぼう雪が白くつもって、きらきらかがやきました。 するとどこからか一ぴきの野うさぎが、まい日のように来て、もみの木のあたまをとびこえとびこえしてあそびました。 ――ああ、じつにいやだったらありません。 ――でも、それからのち、ふた冬とおりこすと、もみの木はかなり、せいが高くなりましたから、うさぎはもうただ、そのまわりを、ぴょんぴょん、はねまわっているだけでした。
「ああうれしい。 だんだんそだっていって、今に大きな年をとった木になるんだ。 世のなかにこんなにすばらしいことはない。」
もみの木は、こんなことを
秋になると、いつも木こりがやって来て、いちばん大きい木を二、三本きりだします。
これは、まい年のおきまりでした。
そのときは、見あげるほど高い木が、どしんという大きな音をたてて、
みんな、どこへいくんだろう。 いったいどうなるんだろう。
春になって、つばめと、こうのとりがとんで来たとき、もみの木はさっそくそのわけをたずねました。
「ねえ、ほんとにどこへつれて行かれたんでしょうね。 あなたがた。 とちゅうでおあいになりませんでしたか。」
つばめはなんにもしりませんでした。