あたらしい憲法のはなし
著者:文部省
あたらしいけんぽうのはなし - もんぶしょう
文字数:20,654 底本発行年:1947
[#改丁]
一 憲法
みなさん、あたらしい憲法ができました。 そうして昭和二十二年五月三日から、私たち日本國民は、この憲法を守ってゆくことになりました。 このあたらしい憲法をこしらえるために、たくさんの人々が、たいへん苦心をなさいました。 ところでみなさんは、憲法というものはどんなものかごぞんじですか。 じぶんの身にかゝわりのないことのようにおもっている人はないでしょうか。 もしそうならば、それは大きなまちがいです。
國の仕事は、一日も休むことはできません。 また、國を治めてゆく仕事のやりかたは、はっきりときめておかなければなりません。 そのためには、いろ/\規則がいるのです。 この規則はたくさんありますが、そのうちで、いちばん大事な規則が憲法です。
國をどういうふうに治め、國の仕事をどういうふうにやってゆくかということをきめた、いちばん根本になっている規則が憲法です。 もしみなさんの家の柱がなくなったとしたらどうでしょう。 家はたちまちたおれてしまうでしょう。 いま國を家にたとえると、ちょうど柱にあたるものが憲法です。 もし憲法がなければ、國の中におゝぜいの人がいても、どうして國を治めてゆくかということがわかりません。 それでどこの國でも、憲法をいちばん大事な規則として、これをたいせつに守ってゆくのです。 國でいちばん大事な規則は、いいかえれば、いちばん高い位にある規則ですから、これを國の「最高法規」というのです。
ところがこの憲法には、いまおはなししたように、國の仕事のやりかたのほかに、もう一つ大事なことが書いてあるのです。 それは國民の権利のことです。 この権利のことは、あとでくわしくおはなししますから、こゝではたゞ、なぜそれが、國の仕事のやりかたをきめた規則と同じように大事であるか、ということだけをおはなししておきましょう。
みなさんは日本國民のうちのひとりです。 國民のひとり/\が、かしこくなり、強くならなければ、國民ぜんたいがかしこく、また、強くなれません。 國の力のもとは、ひとり/\の國民にあります。 そこで國は、この國民のひとり/\の力をはっきりとみとめて、しっかりと守ってゆくのです。 そのために、國民のひとり/\に、いろ/\大事な権利があることを、憲法できめているのです。 この國民の大事な権利のことを「基本的人権」というのです。 これも憲法の中に書いてあるのです。
そこでもういちど、憲法とはどういうものであるかということを申しておきます。 憲法とは、國でいちばん大事な規則、すなわち「最高法規」というもので、その中には、だいたい二つのことが記されています。 その一つは、國の治めかた、國の仕事のやりかたをきめた規則です。 もう一つは、國民のいちばん大事な権利、すなわち「基本的人権」をきめた規則です。 このほかにまた憲法は、その必要により、いろ/\のことをきめることがあります。 こんどの憲法にも、あとでおはなしするように、これからは戰爭をけっしてしないという、たいせつなことがきめられています。
これまであった憲法は、明治二十二年にできたもので、これは明治天皇がおつくりになって、國民にあたえられたものです。 しかし、こんどのあたらしい憲法は、日本國民がじぶんでつくったもので、日本國民ぜんたいの意見で、自由につくられたものであります。 この國民ぜんたいの意見を知るために、昭和二十一年四月十日に総選挙が行われ、あたらしい國民の代表がえらばれて、その人々がこの憲法をつくったのです。
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あたらしい憲法のはなし - 情報
青空情報
底本:「あたらしい憲法のはなし」日本平和委員会
1972(昭和47)年11月3日初版発行
2004(平成16)年1月27日第38版
底本の親本:「あたらしい憲法のはなし」実業教科書株式会社
1947(昭和22)年7月28日同日翻刻印刷
1947(昭和22)年8月2日同日翻刷発行
1947(昭和22)年8月2日文部省検査済
※「/\」と「/″\」の使い方は、底本通りにしました。
入力:林 幸雄
校正:松永正敏
2004年6月9日作成
2013年6月7日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:あたらしい憲法のはなし