レ・ミゼラブル 05 第二部 コゼット
著者:ビクトル・ユーゴー Victor Hugo
レ・ミゼラブル
文字数:260,073 底本発行年:1987
第一編 ワーテルロー
一 ニヴェルから来る道にあるもの
一八六一年五月のある麗しい朝、一人の旅人、すなわちこの物語の著者は、ニヴェルからやってきてラ・ユルプの方へ向かっていた。
彼は徒歩で、両側に並み木の並んでる石畳の広い街道を進んでいった。
街道は立ち並んで大波のようになってる丘の上を曲がりくねって、あるいは高くあるいは低く続いていた。
彼はもうリロアおよびボア・センニュール・イザアクを通り過ぎていた。
西の方に、ブレーヌ・ラルーの花びんを逆さにしたような
その飲食店から約八分の一里ほどきたころ、彼はある小さな谷間の底に達した。
街道の
そこに路傍の右手に一軒の宿屋があった。
入り口には四輪の荷車があり、
たがいちがいの
太陽はうららかで、木々の枝は、風のためというよりもむしろ小鳥の巣から来るらしい静かな五月の揺らぎをしていた。 一羽のりっぱな小鳥が、たぶん恋をしているのであろう、大きな木の中で夢中にさえずっていた。
門の左側の支柱の下の方の石に、
彼女は旅人を見、また彼がながめているものを認めた。
「そんな穴をあけたのはフランスの大砲の
そして女はまた付けたした。
「門の上の方の釘の所にも穴がありましょう。
あれはビスカイヤン銃の
「ここは何という所です。」 と旅人は尋ねた。
「ウーゴモンです。」 と百姓女は答えた。
第一編 ワーテルロー
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レ・ミゼラブル - 情報
青空情報
底本:「レ・ミゼラブル(一)」岩波文庫、岩波書店
1987(昭和62)年4月16日改版第1刷発行
「レ・ミゼラブル(二)」岩波文庫、岩波書店
1987(昭和62)年4月16日改版第1刷発行
※誤植の確認に「レ・ミゼラブル(二)」岩波文庫、岩波書店1960(昭和35)年12月20日第15刷、「レ・ミゼラブル(三)」岩波文庫、岩波書店1959(昭和34)年12月10日第14刷を用いました。
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年1月15日作成
2013年4月21日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:レ・ミゼラブル