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白雪姫

原題:SNEEWITTCHEN

著者:グリム

しらゆきひめ

文字数:10,652 底本発行年:1949
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序章-章なし

むかしむかし、冬のさなかのことでした。 雪が、鳥の羽のように、ヒラヒラと天からふっていましたときに、ひとりの女王じょおうさまが、こくたんのわくのはまったまどのところにすわって、ぬいものをしておいでになりました。 女王さまは、ぬいものをしながら、雪をながめておいでになりましたが、チクリとゆびをはりでおさしになりました。 すると、雪のつもった中に、ポタポタポタと三てきがおちました。 まっ白い雪の中で、そのまっ赤なの色が、たいへんきれいに見えたものですから、女王さまはひとりで、こんなことをお考えになりました。

「どうかして、わたしは、雪のようにからだが白く、血のように赤いうつくしいほっぺたをもち、このこくたんのわくのように黒いかみをした子がほしいものだ。」 と。

それから、すこしたちまして、女王さまは、ひとりのおひめさまをおうみになりましたが、そのお姫さまは色が雪のように白く、ほおは血のように赤く、髪の毛はこくたんのように黒くつやがありました。 それで、名も白雪姫しらゆきひめとおつけになりました。 けれども、女王さまは、このお姫さまがおうまれになりますと、すぐおなくなりになりました。

一年以上たちますと、王さまはあとがわりの女王さまをおもらいになりました。 その女王さまはうつくしいかたでしたが、たいへんうぬぼれが強く、わがままなかたで、じぶんよりもほかの人がすこしでもうつくしいと、じっとしてはいられないかたでありました。 ところが、この女王さまは、まえから一つのふしぎなかがみを持っておいでになりました。 その鏡をごらんになるときは、いつでも、こうおっしゃるのでした。

かがみや、鏡、かべにかかっている鏡よ。

国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」

すると、鏡はいつもこう答えていました。

「女王さま、あなたこそ、お国でいちばんうつくしい。」

それをきいて、女王さまはご安心なさるのでした。 というのは、この鏡は、うそをいわないということを、女王さまは、よく知っていられたからです。

そのうちに、白雪姫しらゆきひめは、大きくなるにつれて、だんだんうつくしくなってきました。 お姫さまが、ちょうど七つになられたときには、青々と晴れた日のように、うつくしくなって、女王さまよりも、ずっとうつくしくなりました。 ある日、女王さまは、鏡の前にいって、おたずねになりました。

「鏡や、鏡、壁にかかっている鏡よ。

国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」

すると、鏡は答えていいました。

女王じょおうさま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。

けれども、白雪姫しらゆきひめは、千ばいもうつくしい。」

女王さまは、このことをおききになると、びっくりして、ねたましくなって、顔色を黄いろくしたり、青くしたりなさいました。

さて、それからというものは、女王さまは、白雪姫をごらんになるたびごとに、ひどくいじめるようになりました。 そして、ねたみと、こうまんとが、野原の草がいっぱいはびこるように、女王さまの、心の中にだんだんとはびこってきましたので、いまでは夜もひるも、もうじっとしてはいられなくなりました。

そこで、女王さまは、ひとりのかりうどをじぶんのところにおよびになって、こういいつけられました。

「あの子を、森の中につれていっておくれ。 わたしは、もうあの子を、二どと見たくないんだから。 だが、おまえはあの子をころして、そのしょうこに、あの子のを、このハンケチにつけてこなければなりません。」

かりうどは、そのおおせにしたがって、白雪姫しらゆきひめを森の中へつれていきました。 かりうどが、りにつかうかたなをぬいて、なにも知らない白雪姫のむねをつきさそうとしますと、お姫さまは泣いて、おっしゃいました。

「ああ、かりうどさん、わたしを助けてちょうだい。 そのかわり、わたしは森のおくの方にはいっていって、もう家にはけっしてかえらないから。」

序章-章なし
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白雪姫 - 情報

白雪姫

しらゆきひめ

文字数 10,652文字

底本 グリム 世界名作 白雪姫

青空情報


底本:「グリム 世界名作 白雪姫」光文社
   1949(昭和24)年3月5日初版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:鈴木厚司
2005年2月22日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:白雪姫

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