浦島太郎
著者:楠山正雄
うらしまたろう - くすやま まさお
文字数:5,542 底本発行年:1996
一
むかし、むかし、
浦島太郎は、毎日つりざおをかついでは海へ出かけて、たいや、かつおなどのおさかなをつって、おとうさんおかあさんをやしなっていました。
ある日、浦島はいつものとおり海へ出て、一日おさかなをつって、帰ってきました。
「まあ、そんなかわいそうなことをするものではない。 いい子だから」
と、とめましたが、子どもたちはきき入れようともしないで、
「なんだい。 なんだい、かまうもんかい」
といいながら、またかめの子を、あおむけにひっくりかえして、足でけったり、
「じゃあ、おじさんがおあしをあげるから、そのかめの子を売っておくれ」
といいますと、こどもたちは、
「うんうん、おあしをくれるならやってもいい」
といって、手を出しました。 そこで浦島はおあしをやってかめの子をもらいうけました。
子どもたちは、
「おじさん、ありがとう。 また買っておくれよ」
と、わいわいいいながら、行ってしまいました。
そのあとで浦島は、こうらからそっと出したかめの
「やれやれ、あぶないところだった。 さあもうお帰りお帰り」
といって、わざわざ、かめを海ばたまで持って行ってはなしてやりました。 かめはさもうれしそうに、首や手足をうごかして、やがて、ぶくぶくあわをたてながら、水のなかにふかくしずんで行ってしまいました。
それから二、三日たって、浦島はまた舟にのって海へつりに出かけました。
遠い
「浦島さん、浦島さん」
とよぶ声がしました。
おやとおもってふりかえってみますと、だれも人のかげは見えません。
その
浦島がふしぎそうな顔をしていると、
「わたくしは、先日
かめがこういったので、浦島はびっくりしました。
「まあ、そうかい。