天守物語
著者:泉鏡花
てんしゅものがたり - いずみ きょうか
文字数:20,599 底本発行年:1942
時 不詳。 ただし封建時代――晩秋。 日没前より深更にいたる。
所 播州姫路。 白鷺城の天守、第五重。
登場人物
天守夫人、富姫。 (打見は二十七八)岩代国猪苗代、亀の城、亀姫。 (二十ばかり)姫川図書之助。 (わかき鷹匠)小田原修理。 山隅九平。 (ともに姫路城主武田播磨守家臣)十文字ヶ原、朱の盤坊。 茅野ヶ原の舌長姥。 (ともに亀姫の眷属)近江之丞桃六。 (工人)桔梗。 萩。 葛。 女郎花。 撫子。 (いずれも富姫の侍女)薄。 (おなじく奥女中)女の童、禿、五人。 武士、討手、大勢。
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舞台。
天守の五重。
左右に柱、向って三方を
ここはどこの細道じゃ、細道じゃ、
天神様の細道じゃ、細道じゃ。
――うたいつつ幕