ドグラ・マグラ
著者:夢野久作
ドグラ・マグラ - ゆめの きゅうさく
文字数:422,518 底本発行年:1992
[#ページの左右中央]
巻頭歌
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
[#改ページ]
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
私がウスウスと眼を覚ました時、こうした
それをジッと聞いているうちに……今は真夜中だな……と直覚した。 そうしてどこか近くでボンボン時計が鳴っているんだな……と思い思い、又もウトウトしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、いつとなく次々に消え薄れて行って、そこいら中がヒッソリと静まり返ってしまった。
私はフッと眼を開いた。
かなり高い、白ペンキ塗の天井裏から、薄白い
……おかしいな…………。
私は大の字
青黒い
その三方の壁に、黒い鉄格子と、
窓の無い側の壁の附け根には、やはり
……おかしいぞ…………。
私は少し頭を持ち上げて、自分の
白い、新しいゴワゴワした木綿の着物が二枚重ねて着せてあって、短かいガーゼの帯が一本、胸高に結んである。
そこから丸々と
……いよいよおかしい……。
……鼻が
……私はガバと跳ね起きた。
モウ一度、顔を撫でまわしてみた。
そこいらをキョロキョロと見廻わした。
……誰だろう……俺はコンナ人間を知らない……。
胸の動悸がみるみる高まった。
早鐘を
……こんな不思議なことがあろうか……。
……自分で自分を忘れてしまっている……。
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ドグラ・マグラ - 情報
青空情報
底本:「夢野久作全集9」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年4月22日第1刷発行
2002(平成14)年9月5日第4刷発行
初出:「ドグラ・マグラ」松柏館書店
1935(昭和10)年1月15日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※このファイル中で注記している最大の文字は「6段階大きな文字」です。6段階大きな文字は、高さと幅が本文で使われている文字の2倍強程度の大きさです。
なお、文字の大きさの注記は、論文のタイトルや新聞の見出しを想定している箇所など、文字が本文より特に大きい箇所のみにつけました。
※「キチガイ地獄外道祭文」「十」の葉書中、切手を貼る位置を示す罫は、底本では波線です。
入力:砂場清隆
校正:ドグラマグラを世に出す会
2007年11月29日作成
2011年5月20日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました.入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:ドグラ・マグラ