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『春と修羅』

著者:宮沢賢治

『はるとしゅら』 - みやざわ けんじ

文字数:42,476 底本発行年:1986
著者リスト:
著者宮沢 賢治
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序章-章なし

[#ページの左右中央]

心象スケツチ

春と修羅

大正十一、二年

[#改丁]

わたくしといふ現象は

仮定された有機交流電燈の

ひとつの青い照明です

(あらゆる透明な幽霊の複合体)

風景やみんなといつしよに

せはしくせはしく明滅しながら

いかにもたしかにともりつづける

因果交流電燈の

ひとつの青い照明です

(ひかりはたもち その電燈は失はれ)

これらは二十二箇月の

過去とかんずる方角から

紙と鉱質インクをつらね

(すべてわたくしと明滅し

みんなが同時に感ずるもの)

ここまでたもちつゞけられた

かげとひかりのひとくさりづつ

そのとほりの心象スケツチです

これらについて人や銀河や修羅や海胆は

宇宙塵をたべ または空気や塩水を呼吸しながら

それぞれ新鮮な本体論もかんがへませうが

それらも畢竟こゝろのひとつの風物です

たゞたしかに記録されたこれらのけしきは

記録されたそのとほりのこのけしきで

それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで

ある程度まではみんなに共通いたします

(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに

みんなのおのおののなかのすべてですから)

けれどもこれら新生代沖積世の

巨大に明るい時間の集積のなかで

正しくうつされた筈のこれらのことばが

わづかその一点にも均しい明暗のうちに

(あるいは修羅の十億年)

序章-章なし
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『春と修羅』 - 情報

『春と修羅』

『はるとしゅら』

文字数 42,476文字

著者リスト:
著者宮沢 賢治

底本 宮沢賢治全集1

青空情報


底本:「宮沢賢治全集1」ちくま文庫、筑摩書房
   1986(昭和61)年2月26日第1刷発行
   1998(平成10)年5月12日第17刷発行
※底本で注を表す記号として用いられていた「※」は「*」に置き換えました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:柴田卓治
校正:かとうかおり
2000年10月4日公開
2011年5月11日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:『春と修羅』

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