藍色の蟇
著者:大手拓次
あいいろのひき - おおて たくじ
文字数:26,320 底本発行年:1965
藍色の蟇
森の宝庫の
藍色の蟇は黄色い息をはいて
陰湿の暗い暖炉のなかにひとつの絵模様をかく。
太陽の隠し子のやうにひよわの少年は
美しい葡萄のやうな眼をもつて、
行くよ、行くよ、いさましげに、
空想の
陶器の鴉
陶器製のあをい
なめらかな母韻をつつんでおそひくるあをがらす、
うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。
この日和のしづかさを食べろ。
しなびた船
海がある、
お前の手のひらの海がある。
わたしはよろける。
わたしはお前の手のなかへ捲きこまれる。
灰色の謀叛よ、お前の魂を
清浄に、安らかに伝道のために死なうではないか。
黄金の闇
南がふいて
鳩の胸が光りにふるへ、
わたしの頭は醸された酒のやうに黴の花をはねのける。
赤い
わたしは今、反省と悔悟の闇に
あまくこぼれおちる情趣を抱きしめる。
白い羽根蒲団の上に、
産み月の
悩みをふくんでゐる。
槍の野辺
うす紅い昼の衣裳をきて、お前といふ異国の夢がしとやかにわたしの胸をめぐる。
執拗な陰気な顔をしてる愚かな
うつとりと見惚れて、くやしいけれど言葉も出ない。
古い香木のもえる煙のやうにたちのぼる