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赤ずきん

著者:グリム Grimm

あかずきん

文字数:3,792 底本発行年:1980
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序章-章なし

むかしむかし、あるところにちっちゃな、かわいい女の子がおりました。 その子は、ちょっと見ただけで、どんな人でもかわいくなってしまうような子でしたが、だれよりもいちばんかわいがっていたのは、この子のおばあさんでした。 おばあさんは、この子の顔を見ると、なんでもやりたくなってしまって、いったいなにをやったらいいのか、わからなくなってしまうほどでした。

あるとき、おばあさんはこの子に、赤いビロードでかわいいずきんをこしらえてやりました。 すると、それがまたこの子にとってもよくにあいましたので、それからは、もうほかのものはちっともかぶらなくなってしまいました。 それで、この子は、みんなに「赤ずきんちゃん」「赤ずきんちゃん」とよばれるようになりました。

ある日、おかあさんが赤ずきんちゃんをよんで、いいました。

「赤ずきんちゃん、ちょっとおいで。 ここにおかしがひとつと、ブドウしゅがひとびんあるでしょう。 これをね、おばあさんのところへもっていってちょうだい。 おばあさんは病気びょうきで、よわっていらっしゃるけれど、こういうものをあがると、きっと元気になるのよ。 じゃ、あつくならないうちに、いってらっしゃい。 それからね、そとへでたら、おぎょうぎよく歩いていくのよ。 横道よこみちへかけだしていったりするんじゃありませんよ。 そんなことをすれば、ころんで、びんをこわしてしまって、おばあさんにあげるものが、なんにもなくなってしまうからね。 それから、おばあさんのおへやにはいったら、いちばんさきに、おはようございますって、あいさつするのをわすれちゃだめよ。 そうして、はいるといっしょに、そこらじゅうをきょろきょろ見まわしたりするんじゃありませんよ。」

「だいじょうぶよ。」

と、赤ずきんちゃんはおかあさんにいって、約束やくそくのしるしに指きりをしました。

ところで、おばあさんのうちは、歩いて、村から半時間もかかる森のなかにありました。 赤ずきんちゃんが森のなかへはいりますと、オオカミがひょっこりでてきました。 でも、赤ずきんちゃんは、オオカミがわるいけだものだということをちっとも知りませんでした。 ですから、べつにこわいとも思いませんでした。

「こんにちは、赤ずきんちゃん。」

と、オオカミがいいました。

「こんにちは、オオカミさん。」

「こんなにはやくから、どこへいくの。」

「おばあさんのとこよ。」

「まえかけの下にもっているのは、なあに。」

「おかしとブドウしゅ きのう、おうちでいたのよ。 おばあさんが病気びょうきで、よわっているでしょう。 これをあがると、からだに力がつくからよ。」

「おばあさんのおうちはどこなの、赤ずきんちゃん。」

「もっともっと森のおくで、まだ十五分ぐらいかかるわ。 大きなカシの木が三本立っているその下に、おばあさんのおうちがあるのよ。 まわりには、クルミのがきがあるわ。 あなた、知っているでしょう。」

と、赤ずきんちゃんはいいました。

序章-章なし
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赤ずきん - 情報

赤ずきん

あかずきん

文字数 3,792文字

底本 グリム童話集(1)

青空情報


底本:「グリム童話集(1)」偕成社文庫、偕成社
   1980(昭和55)年6月1刷
   2009(平成21)年6月49刷
入力:sogo
校正:チエコ
2020年12月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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青空文庫:赤ずきん

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