山之口貘詩集
著者:山之口貘
やまのくちばくししゅう - やまのくち ばく
文字数:18,624 底本発行年:1958
著者リスト:
著者:山之口 貘
底本:
山之口貘詩集
0
0
0
喪のある景色
うしろを振りむくと
親である
親のうしろがその親である
その親のそのまたうしろがまたその親の親であるといふやうに
親の親の親ばつかりが
むかしの奧へとつづいてゐる
まへを見ると
まへは子である
子のまへはその子である
その子のそのまたまへはそのまた子の子であるといふやうに
子の子の子の子の子ばつかりが
空の彼方へ消えいるやうに
未來の涯へとつづいてゐる
こんな景色のなかに
神のバトンが落ちてゐる
血に染まつた地球が落ちてゐる
[#改見開き]
世はさまざま
人は米を食つてゐる
ぼくの名とおなじ名の
貘といふ獸は
夢を食ふといふ
羊は紙も食ひ
南京虫は血を吸ひにくる
人にはまた
人を食ひに來る人や人を食ひに出掛ける人もある
さうかとおもふと琉球には
う※[#小書き平仮名む、13-4]まあ木といふ木がある
木としての器量はよくないが詩人みたいな木なんだ
いつも墓場に立つてゐて
そこに來ては泣きくづれる
かなしい聲や涙で育つといふ
う※[#小書き平仮名む、13-9]まあ木といふ風變りな木もある
[#改見開き]
疊
なんにもなかつた疊のうへに
いろんな物があらはれた
まるでこの世のいろんな姿の文字どもが
聲をかぎりに詩を呼び廻つて
喪のある景色
━ おわり ━
小説TOPに戻る
0
0
0
読み込み中...
章
0%
読了率
0%
フォント:サイズ
style
行間
段落後の余白
段落字下げ
ふりがな
サイズ
50%
改行:行で改行
改行後の余白
に移動し設定を表示。
行リーダー:文字方向
リーダー:幅 70%
高さ 90%
行数:
1行
ページ送り
ユーザー設定:
(書式設定等)
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
シェア
山之口貘詩集 - 情報
青空情報
底本:「山之口貘詩集」原書房
1958(昭和33)年7月15日初版
1972(昭和47)年7月15日新装第2版
※「顔」と「顏」、「来」と「來」、「揺」と「搖」、「発」と「發」、「巻」と「卷」、「現実」と「現實」、「頂点」と「頂點」、「[#「睛のつくり」]」と「青」、「言ふ」と「云ふ」、「言ひ」と「云ひ」、「言へ」と「云へ」の混在は底本通りです。
入力:kompass
校正:いとうおちゃ
2020年6月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:山之口貘詩集
小説内ジャンプ
コントロール
設定
しおり
フッター表示
おすすめ書式
ページ送り
改行
文字サイズ