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山之口貘詩集

著者:山之口貘

やまのくちばくししゅう - やまのくち ばく

文字数:18,624 底本発行年:1958
著者リスト:
著者山之口 貘
底本: 山之口貘詩集
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喪のある景色

うしろを振りむくと

親である

親のうしろがその親である

その親のそのまたうしろがまたその親の親であるといふやうに

親の親の親ばつかりが

むかしの奧へとつづいてゐる

まへを見ると

まへは子である

子のまへはその子である

その子のそのまたまへはそのまた子の子であるといふやうに

子の子の子の子の子ばつかりが

空の彼方へ消えいるやうに

未來の涯へとつづいてゐる

こんな景色のなかに

神のバトンが落ちてゐる

血に染まつた地球が落ちてゐる

[#改見開き]

世はさまざま

人は米を食つてゐる

ぼくの名とおなじ名の

貘といふ獸は

夢を食ふといふ

羊は紙も食ひ

南京虫は血を吸ひにくる

人にはまた

人を食ひに來る人や人を食ひに出掛ける人もある

さうかとおもふと琉球には

う※[#小書き平仮名む、13-4]まあ木といふ木がある

木としての器量はよくないが詩人みたいな木なんだ

いつも墓場に立つてゐて

そこに來ては泣きくづれる

かなしい聲や涙で育つといふ

う※[#小書き平仮名む、13-9]まあ木といふ風變りな木もある

[#改見開き]

なんにもなかつた疊のうへに

いろんな物があらはれた

まるでこの世のいろんな姿の文字どもが

聲をかぎりに詩を呼び廻つて

喪のある景色

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山之口貘詩集 - 情報

山之口貘詩集

やまのくちばくししゅう

文字数 18,624文字

著者リスト:
著者山之口 貘

底本 山之口貘詩集

青空情報


底本:「山之口貘詩集」原書房
   1958(昭和33)年7月15日初版
   1972(昭和47)年7月15日新装第2版
※「顔」と「顏」、「来」と「來」、「揺」と「搖」、「発」と「發」、「巻」と「卷」、「現実」と「現實」、「頂点」と「頂點」、「[#「睛のつくり」]」と「青」、「言ふ」と「云ふ」、「言ひ」と「云ひ」、「言へ」と「云へ」の混在は底本通りです。
入力:kompass
校正:いとうおちゃ
2020年6月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:山之口貘詩集

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