ワーニャ伯父さん ――田園生活の情景 四幕――
原題:ДЯДЯ ВАНЯ
著者:アントン・チェーホフ Anton Chekhov
ワーニャおじさん
文字数:52,854 底本発行年:1967
人物
セレブリャコーフ(アレクサンドル・ヴラジーミロヴィチ) 退職の大学教授
エレーナ(アンドレーヴナ) その妻、二十七歳
ソーニャ(ソフィヤ・アレクサンドロヴナ) 先妻の娘
ヴォイニーツカヤ夫人(マリヤ・ワシーリエヴナ) 三等官の未亡人、先妻の母
ワーニャ伯父さん(イワン・ペトローヴィチ・ヴォイニーツキイ) その息子
アーストロフ(ミハイル・リヴォーヴィチ) 医師
テレーギン(イリヤ・イリイーチ) 落ちぶれた地主
マリーナ 年寄りの乳母
下男
セレブリャコーフの田舎屋敷での出来事
[#改ページ]
第一幕
庭。
ベランダのついた家の一部が見える。
並木道のポプラの老樹の下に、テーブルがあって、お茶の支度ができている。
ベンチ、
曇り日。
マリーナ(ぶよぶよした、動きの少ない
マリーナ (コップに茶をつぐ)お一ついかが、
アーストロフ (気乗りのしない様子で、コップを受ける)あんまり欲しくもないがね。
マリーナ ウオトカならあがるんでしょう。
アーストロフ いいや、ウオトカも毎日はやらない。 それに、今日は蒸し蒸しするしな。 (間)ねえ、ばあやさん。 あんたと知り合いになってから、どれくらいになるかなあ。
マリーナ (考えながら)どれくらい? そうですね。 ……あんたが、この土地においでたのは……あれは、いつだったか……まだソーニャちゃんのお母御の、ヴェーラ様がご存命の頃でしたわねえ。 あの方がおいでの時分、あんたは、ふた冬ここへ、かよって見えましたよ。 ……すると、かれこれもう、十一年になるわけですねえ、(思案して)それとも、もっとになるかしら。
アーストロフ その時分から見ると、わたしも随分かわったろうねえ。
マリーナ ええ、随分。 あのころは、お若かったし、おきれいでもあんなすったけれど、今じゃもう、だいぶおふけになりましたよ。 男前も、昔のようじゃないしねえ。 なにしろ――ウオトカをあがるからねえ。
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
ワーニャ伯父さん - 情報
ワーニャ伯父さん ――田園生活の情景 四幕――
ワーニャおじさん ――でんえんせいかつのじょうけい よんまく――
文字数 52,854文字
底本 かもめ・ワーニャ伯父さん