ガリバー旅行記
著者:ジョナサン・スイフト Jonathan Swift
ガリバーりょこうき
文字数:119,876 底本発行年:1995
第一、小人国(リリパット)
1 大騒動
私はいろ/\不思議な国を旅行して、さま/″\の珍しいことを見てきた者です。 名前はレミュエル・ガリバーと申します。
子供のときから、船に乗って外国へ行ってみたいと思っていたので、航海術や、数学や、医学などを勉強しました。 外国語の勉強も、私は大へん得意でした。
一六九九年の五月、私は『かもしか号』に乗って、イギリスの港から出帆しました。 船が東インドに向う頃から、海が荒れだし、船員たちは大そう弱っていました。
十一月五日のことです。 ひどい霧の中を、船は進んでいました。 その霧のために、大きな岩が、すぐ目の前に現れてくるまで、気がつかなかったのです。
あッという間に、岩に衝突、船は真二つになりました。
それでも、六人だけはボートに乗り移ることができました。
私たちは、くた/\に疲れていたので、ボートを
たゞ、私はひとり夢中で、泳ぎつゞけました。 何度も/\、試しに足を下げてみましたが、とても海底にはとゞきません。 嵐はようやく静まってきましたが、私はもう泳ぐ力もなくなっていました。 そして私の足は、今ひとりでに海底にとゞきました。
ふと気がつくと、背が立つのです。 このときほど、うれしかったことはありません。 そこから一マイルばかり歩いて、私は岸にたどりつくことができました。
私が
ほっと目がさめると、もう夜明けらしく、空が明るんでいました。
さて起きようかな、と思い、身動きしようとすると、どうしたことか、身体がさっぱり動きません。
気がつくと、私の身体は、手も足も、細い
日はだん/\暑くなり、それが眼にギラ/\します。
まわりに、何かガヤ/\という騒ぎが聞えてきましたが、しばらくすると、私の足の上を、何か生物が、ゴソ/\
私はそっと、下目を使ってそれを眺めると、なんと、それは人間なのです。 身長六インチもない小人が、弓矢を手にして、私の顎のところに立っているのです。 そのあとにつゞいて、四十人あまりの小人が、今ぞろ/\歩いて来ます。 いや、驚いたの驚かなかったの、私はいきなり、ワッと大声を立てたものです。
第一、小人国(リリパット)
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
ガリバー旅行記 - 情報
青空情報
底本:「ガリバー旅行記」講談社文芸文庫、講談社
1995(平成7)年6月10日第1刷発行
底本の親本:「定本原民喜全集2」青土社
1978(昭和43)年9月
※底本の奥付には、原著作者の表示はありません。しかし、「あとがき」にある「ジョナサン・スイフトという人がこれを書いた」をもとに、このファイルでは、ジョナサン・スイフトを著者、原民喜を訳者としました。混在している「スイフト」と「スゥイフト」の内、著者名としては前者をとりました。
※底本の末尾には、「一九七七年一二月刊、晶文社版『原民喜のガリバー旅行記』の「あとがき」以下四篇を、「著者から読者へに代えて」として収録した。」とあります。
入力:kompass
校正:浅原庸子
2003年5月3日作成
2014年3月27日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:ガリバー旅行記