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宝島 02 宝島

著者:スティーブンソン Stevenson Robert Louis

たからじま

文字数:189,688 底本発行年:1935
底本: 宝島
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序章-章なし

宝島の地図

[#改ページ]

買うのを躊躇する人に

もしも船乗ふなのり調子の船乗物語や、

暴風雨あらしや冒険、暑さ寒さが、

もしもスクーナー船や、島々や、

置去おきざびとや海賊や埋められた黄金おうごんや、

さてはまた昔の風のままに再び語られた

あらゆる古いロマンスが、

わたしをかつて喜ばせたように、より賢い

今日こんにちの少年たちを喜ばせることが出来るなら、

――それならよろしい、すぐ始め給え! もしそうでなく、

もし勉強好きな青年たちが、

昔の嗜好を忘れてしまい、

キングストンや、勇者バランタインや、

森と波とのクーパー(註一)を、もはや欲しないなら、

それもまたよろしい! それなら私と私の海賊どもは、

それらの人や彼等の創造物のよこたわ

墳墓の中に仲間入りせんことを!

[#改丁]

第一篇 老海賊

第一章「ベンボー提督アドミラル・ベンボー屋」へ来た老水夫

大地主のトゥリローニーさんや、医師のリヴジー先生や、その他の方々かたがたが、私に、宝島についての顛末を、初めから終りまで、ただまだ掘り出してない宝もあることだから島の方位だけは秘して、すっかり書き留めてくれと言われるので、私は、キリスト紀元一七――年に筆を起し、私の父が「ベンボー提督アドミラル・ベンボー(註二)」という宿屋をやっていて、あのサーベル傷のある日にけた老水夫が、初めて私たちのうちに泊りこんだ時まで、溯ることにする。

私は、彼が、船員衣類箱(註三)を後から手押車ておしぐるまで運ばせながら、宿屋の戸口のところへのそりのそりと歩いて来た時のことを、まるで昨日きのうのことのように覚えている。 背の高い、巌乗な、どっしりした、栗色の男だった。 タールまみれの弁髪がよごれた青い上衣の肩に垂れていた(註四) 手は荒れて傷痕だらけで、黒い挫けた爪をしていた。 そしてサーベル傷が片頬にきたなく蒼白くついていた。 私はまた覚えている。 彼は入江を見※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)し、そうしながらひとりで口笛を吹いていたが、それから突然、その後もたびたび歌ったあの古い船唄を歌い出したのだった。 ――

死人箱しびとのはこにゃあ十五人――

よいこらさあ、それからラムが一罎ひとびんと!(註五)

揚錨絞盤キャプスタンてこ[#「てこを」は底本では「挺を」]※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)すのに調子を合せて歌ってしゃがらしたらしい、高い、老いぼれたよぼよぼの声だった。 それから彼は持っていた木挺のような[#「木挺のような」はママ]棒片ぼうぎれドアをこつこつと叩き、私の父が出ると、ぶっきらぼうにラム酒を一杯注文した。 それを持ってゆくと、彼は、酒の品評家のように、ちびりちびりと味いながらゆっくり飲み、その間も、あたりの断崖を見※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)したり店の看板を見上げたりしていた。

「これぁ便利な入江だ。」 とようやく彼は言い出した。 「この酒屋も気の利いたとこにあるな。

序章-章なし
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宝島 - 情報

宝島 02 宝島

たからじま 02 たからじま

文字数 189,688文字

底本 宝島

青空情報


底本:「宝島」岩波文庫、岩波書店
   1935(昭和10)年10月30日初版第1刷発行
   1956(昭和31)年6月30日第17刷発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「亦→また、既に→すでに、於いて→おいて、於ける→おける、甚だ→はなはだ、以て→もって、殆ど→ほとんど、度々→たびたび、漸く→ようやく、極く→ごく、傍→そば、暫く→しばらく、直ぐ→すぐ、真直→まっすぐ、何故→なぜ、殊に→ことに、更に→さらに、尤も→もっとも、勿論→もちろん、益々→ますます、猶→なお、早速→さっそく、遂に→ついに、此処彼処→ここかしこ、彼処→あすこ、尚→なお、所謂→いわゆる、忽ち→たちまち、何処→どこ、彼奴→あいつ、何時→いつ、苟も→いやしくも、悉く→ことごとく、如何→いか、尚更→なおさら、筈→はず、誰→だれ、頗る→すこぶる、即ち→すなわち、咄嗟→とっさ、全く→まったく、著→着、ハンヅ→ハンズ、乃至→ないし、謂わば→いわば、彼方此方→あちこち、此奴→こいつ、駈→駆、差支え→さしつかえ」
※「燈」と「灯」の使い分けは、底本通りです。
※一部、ルビを補いました。
※入力に際しては、「宝島」新潮文庫(佐々木直次郎・稲沢秀夫訳)を参考にしました。
入力:kompass
校正:伊藤時也
2009年8月12日作成
2012年2月23日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

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