田舎教師
著者:田山花袋
いなかきょうし - たやま かたい
文字数:150,115 底本発行年:1966
一
四里の道は長かった。
その間に
羽生からは車に乗った。
母親が
ふと思い出した。
十日ほど前、親友の
「そうしてみると、先生なかなかご
「ご執心以上さ!」と郁治は笑った。
「この間まではそんな様子が少しもなかったから、なんでもないと思っていたのさ、現にこの間も、『おおいに悟った』ッて言うから、ラヴのために一身上の希望を捨ててはつまらないと思って、それであきらめたのかと思ったら、
「そうさ」
「不思議だねえ」
「この間、手紙をよこして、『余も
この Physical なしにという言葉は、清三に一種の
郁治は突然、
「僕には君、
その調子が軽かったので、
「僕にもあるさ!」
と清三が笑って合わせた。
調子抜けがして、二人はまた黙って歩いた。
しばらくして、
「君はあの『
郁治はこうたずねた。
「知ってるさ」
「君は先生にラヴができるかね」
一
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
田舎教師 - 情報
青空情報
底本:「田舎教師 他一編」旺文社文庫、旺文社
1966(昭和41)年8月10日初版発行
1985(昭和60)年重版発行
初出:「田舎教師」佐久良書房
1909(明治42)年10月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※「苧殻(おがら)」と「績殻(おがら)」、「蠶豆」と「蚕豆」の混在は底本どおりです。
※「毛布」に対するルビの「けっとう」と「けっと」の混在は、底本通りです。
※誤植を疑った箇所を、初出の表記にそって、あらためました。
※本文中の編者による語注は省略しました。
※本文中の挿画は省略しました。
入力:林 幸雄
校正:松永正敏
2007年2月2日作成
2020年3月7日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:田舎教師