出家とその弟子
著者:倉田百三
しゅっけとそのでし - くらた ひゃくぞう
文字数:121,650 底本発行年:1917
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この戯曲を信心深きわが
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(正信念仏偈)
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序曲
死ぬるもの
――ある日のまぼろし――
人間 (地上をあゆみつつ)わしは産まれた。
そして太陽の光を浴び、大気を呼吸して生きている。
ほんとに私は生きている。
見よ。
あのいい色の弓なりの空を。
そしてわしのこの素足がしっかりと踏みしめている黒土を。
はえしげる草木、飛び回る
人間 私は人間でございます。
顔蔽いせる者 では「死ぬるもの」じゃな。
人間 私は生きています。 私の知っているのはこれきりです。
顔蔽いせる者 お前はまたごまかしたな。
人間 私の父は死にました。 父の父も。 おゝ私の愛する隣人の多くも死にました。 しかし私が死ぬるとは思われません。
顔蔽いせる者 お前は甘えているな。
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出家とその弟子 - 情報
青空情報
底本:「出家とその弟子」岩波文庫、岩波書店
1927(昭和2)年7月1日第1刷発行
1962(昭和37)年8月16日第48刷改版発行
1991(平成3)年6月5日第81刷発行
底本の親本:「出家とその弟子」岩波書店
1917(大正6)年6月10日発行
初出:「生命の川 第一巻第二号〜第二巻第二号」
1916(大正5)年11月16日〜1917(大正6)年3月5日
※初出誌掲載は第四幕第一場までです。
入力:土屋隆
校正:松永正敏
2006年9月19日作成
2013年10月19日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:出家とその弟子