• URLをコピーしました!

即興詩人

著者:ハンス・クリスチアン・アンデルセン Hans Christian Andersen

そっきょうしじん

文字数:259,637 底本発行年:1967
著者リスト:
0
0
0


序章-章なし

初版例言

一、即興詩人は※(「王+連」、第3水準1-88-24)デンマルクHANSハンス CHRISTIANクリスチアン ANDERSENアンデルセン(1805―1875)の作にして、原本の初板は千八百三十四年に世に公にせられぬ。

二、此譯は明治二十五年九月十日稿を起し、三十四年一月十五日完成す。 殆ど九星霜を經たり。 然れども軍職の身に在るを以て、稿を屬するは、大抵夜間、若くは大祭日日曜日にして家に在り客に接せざる際に於いてす。 予は既に、歳月の久しき、嗜好の※(二の字点、1-2-22)しばしば變じ、文致の畫一なり難きをうらみ、又筆をくことの頻にして、興に乘じて揮瀉すること能はざるを惜みたりき。 世或は予其職をむなしくして、ほしいまゝに述作に耽ると謂ふ。 ゑんも亦甚しきかな。

三、文中加特力カトリツク教の語多し。 印刷成れる後、我國公教會の定譯あるを知りぬ。 而れども遂に改刪かいさんすること能はず。

四、此書は印するに四號活字を以てせり。 予の母の、年老い目力衰へて、つねに予の著作を讀むことをたしなめるは、此書に字形の大なるを選みし所以の一なり。 夫れ字形は大なり。 然れども紙面殆ど餘白を留めず、段落猶且連續して書し、以て紙數をしてはなはだ加はらざらしむることを得たり。

  明治三十五年七月七日下志津陣營に於いて

譯者識す

第十三版題言

是れ予が壯時の筆に成れる IMPROVISATORENイムプロヰザトオレン の譯本なり。 國語と漢文とを調和し、雅言と俚辭とを融合せむと欲せし、放膽にして無謀なる嘗試は、今新に其得失を論ずることをもちゐざるべし。 初めこれを縮刷に付するに臨み、予は大いに字句を削正せむことを期せしに、※(二の字点、1-2-22)たま/\歐洲大戰の起るありて、我國も亦其旋渦中に投ずるに至りぬ。 羽檄旁午うげきばうごの間、予は僅に假刷紙を一閲することを得しのみ。

大正三年八月三十一日觀潮樓に於いて

譯者又識す

わが最初の境界

羅馬ロオマに往きしことある人はピアツツア、バルベリイニを知りたるべし。 こは貝殼持てるトリイトンの神の像に造りしたる、美しき噴井ふんせいある、大なる廣こうぢの名なり。 貝殼よりは水湧き出でゝその高さ數尺に及べり。 羅馬に往きしことなき人もかの廣こうぢのさまをば銅板畫にて見つることあらむ。 かゝる畫にはヰア、フエリチエの角なる家の見えぬこそ恨なれ。 わがいふ家の石垣よりのぞきたる三條のの口は水を吐きて石盤に入らしむ。 この家はわがためには尋常よのつねならぬおもしろ味あり。 そをいかにといふにわれはこの家にて生れぬ。 かうべめぐらしてわがをさなかりける程の事をおもへば、目もくるめくばかりいろ/\なる記念の多きことよ。 我はいづこより語り始めむかと心迷ひてむすべを知らず。 又我世の傳奇ドラマの全局を見わたせば、われはいよ/\これを寫す手段にくるしめり。 いかなる事をか緊要ならずとして棄て置くべき。 いかなる事をか全畫圖をおもひ浮べしめむために殊更に數へ擧ぐべき。 わがためには面白きことも外人よそびとのためには何の興もなきものあらむ。

序章-章なし
━ おわり ━  小説TOPに戻る
0
0
0
読み込み中...
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
シェア

即興詩人 - 情報

即興詩人

そっきょうしじん

文字数 259,637文字

著者リスト:

底本 定本限定版 現代日本文學全集 13 森鴎外集(二)

青空情報


底本:「定本限定版 現代日本文學全集 13 森鴎外集(二)」筑摩書房
   1967(昭和42)年11月20日発行
入力:三州生桑
校正:松永正敏
2005年8月25日作成
2008年9月17日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:即興詩人

小説内ジャンプ
コントロール
設定
しおり
おすすめ書式
ページ送り
改行
文字サイズ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!