桜の園
著者:アントン・チェーホフ
さくらのその
文字数:54,175 底本発行年:1967
人物
ラネーフスカヤ(リュボーフィ・アンドレーエヴナ)〔愛称リューバ〕 女地主
アーニャ その娘、十七歳
ワーリャ その養女、二十四歳
ガーエフ(レオニード・アンドレーエヴィチ)〔愛称リョーニャ〕 ラネーフスカヤの兄
ロパーヒン(エルモライ・アレクセーエヴィチ) 商人
トロフィーモフ(ピョートル・セルゲーエヴィチ)〔愛称ペーチャ〕 大学生
ピーシチク(ボリース・ポリーソヴィチ・シメオーノフ) 地主
シャルロッタ(イワーノヴナ) 家庭教師
エピホードフ(セミョーン・パンテレーエヴィチ) 執事
ドゥニャーシャ 小間使
フィールス
ヤーシャ 若い従僕
浮浪人
駅長
郵便局の官吏
ほかに客たち、召使たち
ラネーフスカヤ夫人の領地でのこと
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第一幕
いまだに子供部屋と呼ばれている部屋。 ドアの一つはアーニャの部屋へ通じる。 夜明け、ほどなく日の昇る時刻。 もう五月で、桜の花が咲いているが、庭は寒い。 明けがたの冷気である。 部屋の窓はみなしまっている。
ドゥニャーシャが
ロパーヒン やっと汽車が着いた、やれやれ。 何時だね?
ドゥニャーシャ まもなく二時。 (蝋燭を吹き消す)もう明るいですわ。
ロパーヒン いったいどのくらい遅れたんだね、汽車は? まあ二時間はまちがいあるまい。
(あくび、のび)おれもいいところがあるよ、とんだドジを踏んじまった! 停車場まで出迎えるつもりで、わざわざここへ来ていながら、とたんに寝すごしちまうなんて……。
ドゥニャーシャ お出かけになったとばかり思ってました。 (耳をすます)おや、もういらしたらしい。
ロパーヒン (耳をすます)ちがう。
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