空家の冒険
原題:The Adventure of the Empty House
著者:コナン・ドイル
あきやのぼうけん
文字数:24,028 底本発行年:1929
一八九四年の春、――ロナルド・アデイア氏が全く不可解な、奇怪極まる事情の下に惨殺されたのは、当時はなはだ有名な事件で、ロンドン市民は一斉に好奇の目を
警察側の探査に得られた、犯罪の詳細については、世間はもう
私はシャーロック・ホームズと親友であったと云うことから、自然犯罪と云うものに対して、特殊な興味を持つようになり、そして彼の失踪後も、世間に現われた種々の問題には、注意深く目を向けるようになったことは、諸君にも想像されることであろう、――私は一再ならず、ただ自分自身の満足のために、こうした問題の解決に、彼一流の解決法を適用してみた。 しかしもちろん決して、彼のような素晴らしい結果は得られなかったが、――
ともあれ、――このロナルド・アデイアの事件だけは、私にとっては全く何物にも比較されない、大悲劇であった。
私は予審調書を読んで、この事件は何者かあるいは、数人の謀殺であると知った時は、シャーロック・ホームズの死は、社会にとってはどんなに大きな損失であるかと云うことを、以前にもましてしみじみと痛感させられたのであった。
私はこの事件にこそ、彼の敏腕に
ロナルド・アデイアは、当時濠洲殖民地の、一知事であった、メイノース伯爵の次男であった。
そしてアデイアの母は、
ロナルド・アデイアは元来、
兇行の行われた当夜は、彼はきっかり十時に倶楽部から帰宅した。
母と妹は、親戚の者と一夕の
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空家の冒険 - 情報
青空情報
底本:「世界探偵小説全集 第四卷 シヤーロツク・ホームズの歸還」平凡社
1929(昭和4)年10月5日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「貴方・貴女→あなた 凡ゆる→あらゆる 或る→ある 或→あるい 如何→いか・いかが 些少か→いささか 何れ→いずれ 何時→いつ 愈よ→いよいよ 所謂→いわゆる 於て→おいて 臆らく→おそらく 却って→かえって 且つ→かつ 曾て・曾つて・嘗つて→かつて 可成り→かなり 彼の→かの かも知れ→かもしれ 屹度→きっと 位→くらい 極く→ごく 併し→しかし 而も→しかも 然らば→しからば 屡々→しばしば 随分→ずいぶん 直・直ぐ→すぐ 即ち→すなわち 凡て→すべて 折角→せっかく 其の→その 多寡が→たかが 多分→たぶん 一寸→ちょっと て居→てい で居→でい て置→てお て居→てお て見→てみ で見→でみ て貰→てもら 何処→どこ 何方→どちら 猶→なお 仲々→なかなか 成る程→なるほど 筈→はず 甚だ→はなはだ 程→ほど 殆んど→ほとんど 先ず→まず 益々→ますます 亦→また 迄→まで 寧ろ→むしろ 若し→もし 勿論→もちろん 以て→もって 尤も→もっとも 矢張り→やはり 漸→ようやく 妾→わたし」
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(句点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※底本は総ルビですが、一部を省きました。
※底本中、混在している「モリアーティ」「モリアーテー」、「バカテル」「バガテル」はそのままにしました。
入力:京都大学電子テクスト研究会入力班(畑中智江)
校正:京都大学電子テクスト研究会校正班(大久保ゆう)
2004年11月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:空家の冒険