• URLをコピーしました!

アラビヤンナイト 03 三、アリ・ババと四十人のどろぼう

原題:ALI BABA AND THE FORTY THIEVES

著者:菊池寛

アラビヤンナイト - きくち かん

文字数:9,223 底本発行年:1948
著者リスト:
著者菊池 寛
0
0
0


序章-章なし

昔、ペルシャのある町に、二人の兄弟が住んでいました。 兄さんの名をカシムと言い、弟の名をアリ・ババと言いました。 お父さんがなくなる時、兄弟二人に、財産ざいさんを半分ずつに分けてくれましたので、二人は、同じような財産を持っておりました。

さて、カシムはお金持のおじょうさんをおよめさんにもらいました。 それからアリ・ババは貧乏びんぼうな娘をおかみさんにもらいました。 お金持のおじょうさんをもらったカシムは、毎日ぶらぶら遊んでくらしていましたが、そのはんたいに、アリ・ババは毎日せっせと働かなくてはなりませんでした。 毎朝早くから三びきのろばを引いて森へ出かけて、木を切っては、それを町へ持って帰って売って、そのお金で、やっとその日その日をくらしてゆくというありさまでした。

ある日のこと、アリ・ババが、いつものように森へ行って木を切っていますと、はるか向うの方に、まっ黒い砂けむりが、もうもうと立っているのが見えました。 その砂けむりは、見るまにこちらへ近づいて来ましたが、見れば、それはたくさんの人が馬に乗って、いそいでかけて来るのでした。

「きっと、どろぼうにちがいない。」 アリ・ババはふるえながら、三びきのろばをかくして、自分はそばの木にのぼりました。 そして、こわごわ様子ようすを見ていました。

アリ・ババののぼった木の下まで来ると、どろぼうたちは、みんな馬からとびおりました。 くらにつけてあった袋もおろしました。

そして、そのどろぼうたちのかしららしい男が、木のそばにある岩の上にのぼって行きました。 そしていきなり、

ひらけ、ごま。」

と、大きな声でさけびました。 すると、どうでしょう。 その岩が、ぱっと二つにわれました。 中には重そうな戸がまっているのが見えました。 やがて、その戸は見る見るうちにすうーっと開いてゆきました。 そして、どろぼうたちが、その戸の中へどかどかと入って行くと、音もなく戸が閉まってしまいました。

やがてまもなく、どろぼうたちは出て来ました。 さっきのかしらが、また、

「閉まれ、ごま。」

と、さけびました。 戸はすうーっと閉まってしまいました。 そして岩も、もとの岩になってしまいました。 どろぼうたちはどこかへ去ってしまいました。

アリ・ババは木からおりました。 そして、さっきどろぼうのかしらが言った、ふしぎな言葉ことばをおぼえていたものですから、岩の上へのぼって、

「開け、ごま。」 と、どなってみました。

そうすると、やっぱり岩がわれて、さっきの戸が開きました。 アリ・ババは中へ入って行きました。 その中は大きなほら穴でした。 りっぱな宝物たからものや、金貨きんかや銀貨をつめこんだ大きなふくろが、すみからすみまで、ぎっしりとつみ重ねてありました。 これだけのものをあつめるには、まあ何年かかったことだろうと、アリ・ババは思いました。

序章-章なし
━ おわり ━  小説TOPに戻る
0
0
0
読み込み中...
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
シェア

アラビヤンナイト - 情報

アラビヤンナイト 03 三、アリ・ババと四十人のどろぼう

アラビヤンナイト 03 さん、アリ・ババとよんじゅうにんのどろぼう

文字数 9,223文字

著者リスト:
著者菊池 寛

底本 アラビヤンナイト

青空情報


底本:「アラビヤンナイト」主婦之友社
   1948(昭和23)年7月10日初版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:京都大学点訳サークル
2004年11月2日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:アラビヤンナイト

小説内ジャンプ
コントロール
設定
しおり
おすすめ書式
ページ送り
改行
文字サイズ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!