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アラビヤンナイト 01 一、アラジンとふしぎなランプ

原題:ALADDIN AND THE WONDERFUL LAMP

著者:菊池寛

アラビヤンナイト - きくち かん

文字数:17,644 底本発行年:1948
著者リスト:
著者菊池 寛
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序章-章なし

昔、しなの都に、ムスタフという貧乏びんぼうな仕立屋が住んでいました。 このムスタフには、おかみさんと、アラジンと呼ぶたった一人の息子むすことがありました。

この仕立屋は大へん心がけのよい人で、一生けんめいに働きました。 けれども、悲しいことには、息子がだいのなまけ者で、年が年じゅう、町へ行って、なまけ者の子供たちと遊びくらしていました。 何か仕事をおぼえなければならない年頃になっても、そんなことはまっぴらだと言ってはねつけますので、ほんとうにこの子のことをどうしたらいいのか、両親もとほうにくれているありさまでした。

それでも、お父さんのムスタフは、せめて仕立屋にでもしようと思いました。 それである日、アラジンを仕事場へつれて入って、仕立物をおしえようとしましたが、アラジンは、ばかにして笑っているばかりでした。 そして、お父さんのゆだんを見すまして、いち早くにげ出してしまいました。 お父さんとお母さんは、すぐに追っかけて出たのですけれど、アラジンの走り方があんまり早いので、もうどこへ行ったのか、かいもく、姿は見えませんでした。

「ああ、わしには、このなまけ者をどうすることもできないのか。」

ムスタフは、なげきました。 そして、まもなく、子供のことを心配のあまり、病気になって、死んでしまいました。 こうなると、アラジンのお母さんは、少しばかりあった仕立物に使う道具どうぐを売りはらって、それから後は、糸をつむいでくらしを立てていました。

さて、ある日、アラジンが、いつものように、町のなまけ者と一しょに、めんこをして遊んでいました。 ところがそこへ、いつのまにかせいの高い、色の黒いおじいさんがやって来て、じっとアラジンを見つめていました。 やがて、めんこが一しょうぶ終った時、そのおじいさんがアラジンに「おいで、おいで」をしました。 そして、

「お前の名は何と言うのかね。」 と、たずねました。 この人は大へんしんせつそうなふうをしていましたが、ほんとうは、アフリカのまほう使でした。

「私の名はアラジンです。」

アラジンは、いったい、このおじいさんはだれだろうと思いながら、こう答えました。

「それから、お前のお父さんの名は。」 また、まほう使が聞きました。

「お父さんの名はムスタフと言って、仕立屋でした。 でも、とっくの昔に死にましたよ。」

と、アラジンは答えました。 すると、この悪者のまほう使は、

「ああ、それは私の弟だ。 お前は、まあ、私のおいだったんだね。 私は、しばらく外国へ行っていた、お前の伯父おじさんなんだよ。」

と言って、いきなりアラジンをだきしめました。 そして、

「早く家へ帰って、お母さんに、私が会いに行きますから、と言っておくれ。 それから、ほんの少しですが、と言って、これをあげておくれ。」 と言って、アラジンの手に、金貨きんかを五枚にぎらせました。

アラジンは、大いそぎで家へ帰って、お母さんに、この伯父さんだという人の話をしました。 するとお母さんは、

「そりゃあ、きっと、何かのまちがいだろう。

序章-章なし
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アラビヤンナイト - 情報

アラビヤンナイト 01 一、アラジンとふしぎなランプ

アラビヤンナイト 01 いち、アラジンとふしぎなランプ

文字数 17,644文字

著者リスト:
著者菊池 寛

底本 アラビヤンナイト

青空情報


底本:「アラビヤンナイト」主婦之友社
   1948(昭和23)年7月10日初版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:京都大学点訳サークル
2004年11月2日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:アラビヤンナイト

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