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灰だらけ姫 またの名 「ガラスの上ぐつ」

原題:CENDRILLON, OU LA PETIT PANTOUFLE DE VERRE

著者:ペロー Perrault

サンドリヨン

文字数:8,212 底本発行年:1950
著者リスト:
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序章-章なし

むかしむかし、あるところに、なに不自由なく、くらしている紳士しんしがありました。 ところが、その二どめにもらったおくさんというのは、それはそれは、ふたりとない、こうまんでわがままな、いばりやでした。 まえのご主人とのなかに、ふたりもこどもがあって、つれ子をしておよめに来たのですが、そのむすめたちというのが、やはり、なにから、なにまでおかあさんにそっくりな、いけないわがままむすめでした。

さて、この紳士しんしには、まえのおくさんから生まれた、もうひとりの若いむすめがありましたが、それは気だてなら、心がけなら、とてもいいひとだったくなった母親そっくりで、このうえないすなおな、やさしい子でした。

結婚けっこん儀式ぎしきがすむとまもなく、こんどのおかあさんは、さっそくいじわるの本性ほんしょうをさらけ出しました。 このおかあさんにとっては、腹ちがいのむすめが、心がけがよくて、そのため、よけいじぶんの生んだこどもたちのあらの見えるのが、なによりもがまんできないことでした。 そこで、ままむすめを台所だいどころにさげて、女中のするしごとに追いつかいました。 お皿を洗ったり、おぜんごしらえをしたり、おくさまのおへやのそうじから、おじょうさまたちのお居間のそうじまで、させられました。 そうして、じぶんは、うちのてっぺんの、屋根うらの、くもの巣だらけなすみで、わらのねどこに、犬のようにまるくなって眠らなければなりませんでした。 そのくせ、ふたりのきょうだいたちは、うつくしいモザイクでゆかをしきつめた、あたたかい、きれいなおへやの中で、りっぱなかざりのついたねだいに眠って、そこには、頭から足のつまさきまでうつる、大きなすがたみもありました。

かわいそうなむすめは、なにもかもじっとこらえていました。 父親は、すっかり母親にまるめられていて、いっしょになって、こごとをいうばかりでしたから、むすめはなにも話しませんでした。 それで、いいつかったしごとをすませると、いつも、かまどの前にかがんで、消炭けしずみや灰の中にうずくまっていましたから、ままむすめの姉と妹は、からかい半分、サンドリヨン(シンデレラ)というあだ名をつけました。 これは灰のかたまりとか、消炭とかいうことで、つまり、それは、「灰だらけ娘」とでもいうことになりましょう。

それにしても、サンドリヨンは、どんなに、きたない身なりはしていても、美しく着かざったふたりのきょうだいたちにくらべては、百そうばいもきれいでしたし、まして心のうつくしさは、くらべものになりませんでした。

さてあるとき、その国の王様の王子が、さかんなぶとう会をもよおして、おおぜい身分のいい人たちを、ダンスにおまねきになったことがありました。 サンドリヨンのふたりのきょうだいも、はばのきくおとうさんのむすめたちでしたから、やはり、ぶとう会におまねきをうけていました。

ふたりは、おまねきをうけてから、それはおかしいように、のぼせあがって、上着うわぎよ、がいとうよ、ずきんよと、まい日えりこのみに、うき身をやつしておりました。 おかげで、サンドリヨンには、新しいやっかいしごとがひとつふえました。 なぜというに、きょうだいたちの着物に火のしをかけたり、袖口そでぐちにかざりぬいしたりするのは、みんなサンドリヨンのしごとだったからです。 ふたりは朝から晩まで、おめかしの話ばかりしていました。

「わたしは、イギリスかざりのついた、赤いビロードの着物にしようとおもうのよ。」 と、姉はいいました。

「じゃあ、わたしは、いつものスカートにしておくわ。 けれど、そのかわり、金の花もようのマントを着るわ。 そうして、ダイヤモンドのおびをするわ。 あれは世間せけんにめったにない品物なんだもの。」

ふたりは、そのじぶん、上手じょうずでひょうばんの美容師びようしをよんで、頭のかざりから足のくつ先まで、一のすきもなしに、すっかり、流行りゅうこうのしたくをととのえさせました。

サンドリヨンも、やはりそういうことのそうだんに、いちいち使われていました。 なにしろ、このむすめは、もののよしあしのよく分かる子でしたから、ふたりのために、いっしょうけんめい、くふうしてやって、おまけに、おけしょうまで手つだってやりました。 サンドリヨンにかみをあげてもらいながら、ふたりは、

「サンドリヨン、おまえさんも、ぶとう会に行きたいとはおもわないかい。」 といいました。

「まあ、おねえさまたちは、わたしをからかっていらっしゃるのね。 わたしのようなものが、どうして行かれるものですか。」

「そうだとも、灰だらけ娘のくせに、ぶとう会なんぞに出かけて行ったら、みんなさぞ笑うだろうよ。」 と、ふたりはいいました。

序章-章なし
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灰だらけ姫 - 情報

灰だらけ姫 またの名 「ガラスの上ぐつ」

サンドリヨン またのな 「ガラスのうわぐつ」

文字数 8,212文字

著者リスト:

底本 世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの

青空情報


底本:「世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの」小峰書店
   1950(昭和25)年5月1日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
※底本は、表題の「灰かぶり姫」に「サンドリヨン」とルビをふっています。
入力:大久保ゆう
校正:秋鹿
2006年1月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:灰だらけ姫

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