• URLをコピーしました!

イワンの馬鹿

原題:SKAZKA O IVANE-DURAKE

著者:トルストイ Tolstoi

イワンのばか

文字数:27,576 底本発行年:1928
著者リスト:
著者レオ・トルストイ
翻訳者菊池 寛
0
0
0


序章-章なし

むかしある国の田舎にお金持の百姓が住んでいました。 百姓には兵隊のシモン、肥満ふとっちょのタラスに馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼおしのマルタという娘がありました。 兵隊のシモンは王様の家来になって戦争に行きました。 肥満ふとっちょのタラスは町へ出て商人に[#底本では「に」が重複]なりました。 馬鹿のイワンと妹のマルタは、うちに残って背中がまがるほどせい出して働きました。 兵隊のシモンは高い位と広い領地を得て、王様のお姫様をお嫁さんに貰いました。 お給金もたくさんだし領地からあが収入みいりも大したものでしたが、彼はそれを、うまくしめくくっていくことが出来ませんでした。 おまけに主人がもうけたものをお嫁さんが滅茶に使ってしまうので、いつも貧乏していなければなりませんでした。

そこで兵隊のシモンは自分の領地へ出かけて行って収入みいりをあつめようとしました。 すると執事は言いました。

収入みいりどころか、牛も馬もすきくわもありません。 何よりも先にそれを手に入れなくちゃいけません。 そうすりゃ、やがてお金も入って来るでしょう。」

そこでシモンは父親のところへ行って言いました。

「お父さん、あなたはお金持なのに私にはまだ何もくれませんでした。 あなたの持ちものを分けてその三分の一を私に下さい。 そうすりゃ私の領地の手入をすることが出来ますから。」

すると年寄った父親は言いました。

「お前はうちのためになることを何もしたことはない。 それにどうして三分の一やることが出来よう。 第一イワンやマルタにすまない。」

と、シモンは、

「イワンは馬鹿です。 それにマルタはお嫁に行く年はとっくに過ぎていて、おまけにつんぼおしです。 あれ等に財産を持たしたってそれが何になるでしょう。」

と言いました。 おじいさんは、

「じゃ、イワンが何というか聞いてみよう。」

と言いました。

イワンは、

「兄さんの欲しいだけ上げなさい。」

と言いました。

そこで兵隊のシモンは父親から分前わけまえを貰ってほくほくもので自分の領地へうつしまた王様のところへ行って仕えました。

肥満のタラスもたくさんのお金をもうけてある商人のうちへおむこさんに行きましたが、それでもまだお金が欲しいと思いました。 そこでやはり父親のところへ出かけて行き、

「私にも私の分け前を下さい。」

と言いました。

しかし父親はタラスにも分けてやりたくなかったので、

序章-章なし
━ おわり ━  小説TOPに戻る
0
0
0
読み込み中...
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
シェア

イワンの馬鹿 - 情報

イワンの馬鹿

イワンのばか

文字数 27,576文字

著者リスト:
翻訳者菊池 寛

底本 小學生全集第十七卷 外国文藝童話集上卷

青空情報


底本:「小學生全集第十七卷 外国文藝童話集上卷」興文社、文藝春秋社
   1928(昭和3)年12月25日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「一層→いっそう か知ら→かしら 位→くらい 毎→ごと 此の→この 凡て→すべて 大分→だいぶ 一寸→ちょっと て置→てお て見→てみ て貰→てもら 何處→どこ どの道→どのみち 中々→なかなか 殆ど→ほとんど 先づ→まず 又→また 迄→まで 間もなく→まもなく 若し→もし や否や→やいなや 私→わし」
※底本は総ルビですが、一部を省きました。
入力:京都大学電子テクスト研究会入力班(加藤祐介)
校正:京都大学電子テクスト研究会校正班(大久保ゆう)
2004年5月18日作成
2005年12月17日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:イワンの馬鹿

小説内ジャンプ
コントロール
設定
しおり
おすすめ書式
ページ送り
改行
文字サイズ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!