孔乙己
著者:魯迅
こういっき - ろじん
文字数:4,264 底本発行年:1932
わたしは十二の歳から村の入口の
孔乙己は立飲みの方でありながら
孔乙己が店に来ると、そこにいる飲手は皆笑い出した。
「孔乙己、お前の顔にまた一つ傷が殖えたね」
とその中の一人が言った。
孔は答えず九文の大銭を
「酒を二合
「馬鹿に景気がいいぜ。 これやテッキリ盗んで来たに違いない」
とわざと大声出して前の一人が言うと、孔乙己は眼玉を剥き出し
「汝はなんすれぞ斯くの如く
「何、清白だと?
孔は顔を真赤にして、額の上に青筋を立て
「
そうして後に続く言葉はとても変梃なもので、「君子固より窮す」とか「者ならん
人の噂では、孔乙己は書物をたくさん読んだ人だが、学校に入りそこない、無職で暮しているうちにだんだん貧乏して、乞食になりかかったが、幸いに手すじがよく字が旨く書けたので、あちこちで書物の浄写を頼まれ、飯の種にありつくことが出来た。
ところが彼には一つの悪い癖があって、酒が大好きで飲みだすと怠け出し、注文主も書物も紙も何もかも、たちまちの
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孔乙己 - 情報
青空情報
底本:「魯迅全集」改造社
1932(昭和7)年11月18日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「彼奴→あいつ 或(る)→ある 大方→おおかた 〜置き→〜おき 曾て→かつて 位→ぐらい 〜呉れ→〜くれ 此奴→こいつ 此→この 偖て→さて 暫く→しばらく 仕舞う→しまう 終い→じまい 随分→ずいぶん 其→その 沢山→たくさん 只→ただ 忽ち→たちまち 多分→たぶん 何処→どこ 迚も→とても 中々→なかなか 〜に取って→〜にとって 筈→はず 甚だ→はなはだ 程→ほど 又・亦→また 未だ→まだ 見る見る→みるみる 若し→もし」
※底本は総ルビですが、一部を省きました。
入力:京都大学電子テクスト研究会入力班(上村要)
校正:京都大学電子テクスト研究会校正班(大久保ゆう)
2005年5月8日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:孔乙己