赤とんぼ
著者:新美南吉
あかとんぼ - にいみ なんきち
文字数:2,956 底本発行年:1980
赤とんぼは、三回ほど空をまわって、いつも休む一本の
山里の昼は静かです。
そして、初夏の山里は、
赤とんぼは、クルリと
赤とんぼの休んでいる竹には、
今はこの家には
赤とんぼは、ツイと竹の先からからだを
三四人の人が、こっちへやって来ます。
赤とんぼは、さっきの竹にまたとまって、じっと近づいて来る人々を見ていました。
一番最初にかけて来たのは、赤いリボンの
赤とんぼは、かあいいおじょうちゃんの赤いリボンにとまってみたくなりました。
でも、おじょうちゃんが
けど、とうとう、おじょうちゃんが前へ来たとき、赤とんぼは、おじょうちゃんの赤いリボンに飛びうつりました。
「あッ、おじょうさん、
赤とんぼは、今におじょうちゃんの手が、自分をつかまえに来やしないかと思って、すぐ飛ぶ用意をしました。
しかし、おじょうちゃんは、赤とんぼをつかまえようともせず、
「まア、あたしの
つばくらが、風のようにかけて行きます。
かあいいおじょうちゃんは、今まで
赤とんぼは、今日も空をまわっています。
「とんぼとんぼ
赤とんぼ
すすきの中は
あぶないよ」
あどけない声で、こんな歌をうたっているのが、聞こえて来ました。
赤とんぼは、あのおじょうちゃんだろうと思って、そのまま、声のする方へ飛んで行きました。
思った通り、うたってるのは、あのおじょうちゃんでした。
おじょうちゃんは、庭で
赤とんぼが、頭の上へ来ると、おじょうちゃんは、持ってたおもちゃの金魚をにぎったまま、
「あたしの赤とんぼ!」とさけんで、両手を高くさし上げました。
赤とんぼは、とても
「おじょうさん、
「いや――」