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赤いくつ

原題:DE RODE SKO

著者:ハンス・クリスティアン・アンデルセン Hans Christian Andersen

あかいくつ

文字数:7,527 底本発行年:1955
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序章-章なし

挿し絵

あるところに、ちいさい女の子がいました。 その子はとてもきれいなかわいらしい子でしたけれども、貧乏だったので、夏のうちははだしであるかなければならず、冬はあつぼったい木のくつをはきました。 ですから、その女の子のかわいらしい足のこうは、すっかり赤くなって、いかにもいじらしく見えました。

村のなかほどに、年よりのくつ屋のおかみさんが住んでいました。 そのおかみさんはせっせと赤いらしゃの古切れをぬって、ちいさなくつを、一足こしらえてくれていました。 このくつはずいぶんかっこうのわるいものでしたが、心のこもった品で、その女の子にやることになっていました。 その女の子の名はカレンといいました。

カレンは、おっかさんのお葬式そうしきの日に、そのくつをもらって、はじめてそれをはいてみました。 赤いくつは、たしかにおとむらいにはふさわしくないものでしたが、ほかに、くつといってなかったので、素足すあしの上にそれをはいて、粗末なかんおけのうしろからついていきました。

そのとき、年とったかっぷくのいいお年よりのおくさまをのせた、古風な大馬車が、そこを通りかかりました。 この奥さまは、むすめの様子をみると、かわいそうになって、

「よくめんどうをみてやりとうございます。 どうか、この子を下さいませんか。」 と、ぼうさんにこういってみました。

こんなことになったのも、赤いくつのおかげだと、カレンはおもいました。 ところが、その奥さまは、これはひどいくつだといって、焼きすてさせてしまいました。 そのかわりカレンは、小ざっぱりと、見ぐるしくない着物を着せられて、本を読んだり、物をったりすることを教えられました。 人びとは、カレンのことを、かわいらしい女の子だといいました。 カレンの鏡は、

「あなたはかわいらしいどころではありません。 ほんとうにお美しくっていらっしゃいます。」 と、いいました。

あるとき女王さまが、王女さまをつれてこの国をご旅行になりました。 人びとは、お城のほうへむれを作ってあつまりました。 そのなかに、カレンもまじっていました。 王女さまは美しい白い着物を着て、窓のところにあらわれて、みんなにご自分の姿が見えるようになさいました。 王女さまはまだわかいので、裳裾もすそもひかず、金のかんむりもかぶっていませんでしたが、目のさめるような赤いモロッコ革のくつをはいていました。 そのくつはたしかにくつ屋のお上さんが、カレンにこしらえてくれたものより、はるかにきれいなきれいなものでした。 世界じゅうさがしたって、この赤いくつにくらべられるものがありましょうか。

さて、カレンは堅信礼けんしんれいをうける年頃になりました。 新しい着物ができたので、ついでに新しいくつまでこしらえてもらって、はくことになりました。 町のお金持のくつ屋が、じぶんの家のしごとべやで、カレンのかわいらしい足の寸法をとりました。 そこには、美しいくつだの、ぴかぴか光る長ぐつだのがはいった、大きなガラスりのはこが並んでいました。 そのへやはたいへんきれいでしたが、あのお年よりの奥さまは、よく目が見えなかったので、それをいっこういいともおもいませんでした。 いろいろとくつが並んでいるなかに、あの王女さまがはいていたのとそっくりの赤いくつがありました。 なんという美しいくつでしたろう。 くつ屋さんは、これはある伯爵はくしゃくのお子さんのためにこしらえたのですが、足に合わなかったのですといいました。

「これはきっと、エナメルがわだね。

序章-章なし
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赤いくつ - 情報

赤いくつ

あかいくつ

文字数 7,527文字

著者リスト:

底本 新訳アンデルセン童話集 第二巻

青空情報


底本:「新訳アンデルセン童話集 第二巻」同和春秋社
   1955(昭和30)年7月15日初版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:鈴木厚司
2005年6月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:赤いくつ

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