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星の銀貨

原題:Die Sterntaler

著者:グリム兄弟 Bruder Grimm

ほしのぎんか

文字数:1,036 底本発行年:1949
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序章-章なし

むかし、むかし、小さい女の子がありました。 この子には、おとうさんもおかあさんもありませんでした。 たいへんびんぼうでしたから、しまいには、もう住むにもへやはないし、もうねるにも寝床ねどこがないようになって、とうとうおしまいには、からだにつけたもののほかは、手にもったパンひとかけきりで、それもなさけぶかい人がめぐんでくれたものでした。

でも、この子は、心のすなおな、信心のあつい子でありました。 それでも、こんなにして世の中からまるで見すてられてしまっているので、この子は、やさしい神さまのお力にだけすがって、ひとりぼっち、野原の上をあるいて行きました。 すると、そこへ、びんぼうらしい男が出て来て、

「ねえ、なにかたべるものをおくれ。 おなかがすいてたまらないよ。」 と、いいました。

女の子は、もっていたパンひとかけのこらず、その男にやってしまいました。 そして、

「どうぞ神さまのおめぐみのありますように。」 と、いのってやって、またあるきだしました。 すると、こんどは、こどもがひとり泣きながらやって来て、

「あたい、あたまがさむくて、こおりそうなの。 なにかかぶるものちょうだい。」 と、いいました。

そこで、女の子は、かぶっていたずきんをぬいで、子どもにやりました。

それから、女の子がまたすこし行くと、こんど出て来たこどもは、着物一枚着ずにふるえていました。 そこで、じぶんの上着うわぎをぬいで着せてやりました。 それからまたすこし行くと、こんど出てきたこどもは、スカートがほしいというので、女の子はそれもぬいで、やりました。

そのうち、女の子はある森にたどりきました。 もうくらくなっていましたが、また、もうひとりこどもが出て来て、肌着はだぎをねだりました。 あくまで心のすなおな女の子は、(もうまっくらになっているからだれにもみられやしないでしょう。 いいわ、肌着もぬいであげることにしましょう。)と、おもって、とうとう肌着までぬいで、やってしまいました。

さて、それまでしてやって、それこそ、ないといって、きれいさっぱりなくなってしまったとき、たちまち、たかい空の上から、お星さまがばらばらおちて来ました。 しかも、それがまったくの、ちかちかと白銀色はくぎんいろをした、ターレル銀貨でありました。 そのうえ、ついいましがた、肌着をぬいでやってしまったばかりなのに、女の子は、いつのまにか新しい肌着をきていて、しかもそれは、この上なくしなやかなあさの肌着でありました。

女の子は、銀貨をひろいあつめて、それで一しょうゆたかにくらしました。

序章-章なし
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星の銀貨 - 情報

星の銀貨

ほしのぎんか

文字数 1,036文字

底本 世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人

青空情報


底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店
   1949(昭和24)年2月20日初版発行
   1949(昭和24)年12月30日4版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:浅原庸子
2004年6月16日作成
2005年11月12日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:星の銀貨

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