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ブレーメンの町楽隊

原題:Die Bremer Stadtmusikanten

著者:グリム兄弟 Bruder Grimm

ブレーメンのちょうがくたい

文字数:4,246 底本発行年:1949
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序章-章なし

主人もちのろばがありました。 もうなが年、こんきよく、おもたい袋をせなかにのせて、粉ひきじょへかよっていました。 さて、年をとって、だんだんからだがいうことをきかなくなり、さすがにこのうえ追いつかうのがむりだとわかると、主人は、ここらでろばのかいぶちをやめたものか、と考えだしました。 ところで、ろばは、さっそくに、こりゃ、ろくなことではないとさとって、げだして、ブレーメンの町をめあてに、とことこ出かけました。 そこへ行ったら、町の楽隊がくたいにやとってもらえようという胸算用むなざんようでした。

しばらくあるくうちに、往来おうらいに一ぴき、りょう犬が、だるそうにころがって、口ばかりあけて、はっは、はっは、あえいでいるのに出あいました。 それはさんざん野山をかけあるいて、へとへとになっているというようすでした。

「おい、すたこら大将、なにをあっぷ、あっぷいっている。」 と、ろばは声をかけました。

「いやはや、きいてくれ、こういうわけだ。」 と、犬はいいました。 「なにしろ年はとる、いくじがなくなる、おいらもむかしのげんきで猟場りょうばをかけあるくわけにはいかない。 主人は、それならいっそ、たたき殺してしまえということになった。 あわてて逃げだしたというわけだが、さて、この先どうしてパンにありつくか、じつはかんがえているところだよ。」

「ところで話だが、おいら、これからブレーメンの町へ出かけて、町の楽隊にやとってもらおうとおもうんだ、どうだ、おめえ、いっしょに行って、いちばん、音楽でめしをくう気はないか。 おいらリュウトをひくから、おめえ、カンカラ太鼓だいこをたたくがいい。」

りょう犬は、うん、よかろうというので、いっしょに出かけました。

それからあまり行かないうちに、ねこが一ぴき、往来にすわりこんだまま、それこそ三日も雨をくったような顔をしていました。

「やあ、どうしたい、床屋とこやの親方、どうやらおひげの手入どころではないという顔つきだが。」 と、ろばはいいました。

「いのちとかえがけというところだ。 けいきのいい顔をしてもいられまい。 なにしろ年をとって来てね、歯はばくばくになる、ねずみのやつをおいまわすよりか、ろばたで香箱こばこつくって、ごろにゃん、ごろにゃん、のどをならしていたくなるさ。 そこで、主人のかみさんが、いっそ水にはめておしまいよといいだした。 そうされないうちに、とびだしては来たが、さていい思案しあんはないしさ、いったいどこへどう行ったものかと、あぐねているのだよ。」 と、ねこはいいました。

「おれたちとなかまで、ブレーメンの町へ行けよ。 おまえさんは、夜の音楽ならお手のものだろう、町の楽隊につかってもらえるぜ。」 と、ろばはいいました。

ねこは、さっそくさんせいして、いっしょに出かけました。

やがて、三人組の脱走者だっそうしゃは、とある屋敷やしき内に来かかりました。 門の上に、その家のおんどりがのっていて、ありったけの声をふりしぼって、さけび立てていました。

「おい、骨のしんまで、じいんとくるような声を出すなあ。 どうかしたのかい。」

と、ろばはいいました。

「なあに、あしたはいいお天気ですよって、知らせてやっているところだよ。」 と、おんどりはいいました。

「なにしろ、けっこうなお聖母せいぼさまの日だ、おちいさいキリストさまの下着の、おせんたくして、ほしなすった日だ。 ところが、そのあしたの日曜日にちようびに、お客があるというんで、ここのおかみさんが、なさけ知らずにもほどがあらあ、女中の話だがね、それで、あすはおいらをスープにしてたべっちまうってんでね、こん晩、さっそく、首をチョン切れといいつかったとよ。

序章-章なし
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ブレーメンの町楽隊 - 情報

ブレーメンの町楽隊

ブレーメンのちょうがくたい

文字数 4,246文字

底本 世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人

青空情報


底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店
   1949(昭和24)年2月20日初版発行
   1949(昭和24)年12月30日4版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:浅原庸子
2004年6月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:ブレーメンの町楽隊

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