おおかみと七ひきのこどもやぎ
原題:DER WOLF UND DIE SIEBEN JUNGEN GEISSLEIN
著者:グリム兄弟 Bruder Grimm
おおかみとななひきのこどもやぎ
文字数:3,636 底本発行年:1949
一
むかし、あるところに、おかあさんのやぎがいました。 このおかあさんやぎには、かわいいこどもやぎが七ひきあって、それをかわいがることは、人間のおかあさんが、そのこどもをかわいがるのと、すこしもちがったところはありませんでした。
ある日、おかあさんやぎは、こどもたちのたべものをとりに森まで出かけて行くので、七ひきのこどもやぎをよんで、こういいきかせました。
「おまえたちにいっておくがね、かあさんが森へ行ってくるあいだ、気をつけてよくおるすばんしてね、けっしておおかみをうちへ入れてはならないよ。 あいつは、おまえたちのこらず、まるのまんま、それこそ皮も毛もあまさずたべてしまうのだよ。 あのわるものは、わからせまいとして、ときどき、すがたをかえてやってくるけれど、なあに、声はしゃがれて、があがあごえだし、足はまっ黒だし、すぐと見わけはつくのだからね。」
すると、こどもやぎは、声をそろえて、
「かあさん、だいじょうぶ、あたいたち、よく気をつけて、おるすばんしますから、心配しないで行っておいでなさい。」 と、いいました。
そこで、おかあさんやぎは、メエ、メエといって、安心して出かけて行きました。
二
やがて、まもなく、たれか、おもての戸をとんとんたたくものがありました。 そうして、
「さあ、こどもたち、あけておくれ、おかあさんだよ。 めいめいに、いいおみやげをもって来たのだよ。」 と、よびました。
でも、こどもやぎは、それがしゃがれた、があがあ声なので、すぐおおかみだということがわかりました。 そこで、
「あけてやらない。
おかあさんじゃないから。
おかあさんは、きれいな、いい声してるけれど、おまえはしゃがれっ
そこで、おおかみは、
「さあ、こどもたち、あけておくれ。 おかあさんだよ、みんなにいいものをもって来たのだよ。」 と、どなりました。
でも、おおかみはまっ黒な前足を、窓のところにかけていたので、こやぎたちはそれをみつけて、
「あけてはやらない。 うちのおかあさんは、おまえのようなまっ黒な足をしていない。 おまえはおおかみだい。」 と、さけびました。
そこで、おおかみは、パン屋の店へ出かけて、
「けつまづいて足をいためたから、ねり粉をなすっておくれ。」 と、いいました。
で、パン屋が、おおかみの前足にねったこなをなすってやりますと、こんどは、
「おい、前足に白いこなをふりかけてくれ。」
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おおかみと七ひきのこどもやぎ - 情報
おおかみと七ひきのこどもやぎ
おおかみとななひきのこどもやぎ
文字数 3,636文字
青空情報
底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店
1949(昭和24)年2月20日初版発行
1949(昭和24)年12月30日4版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:浅原庸子
2004年4月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:おおかみと七ひきのこどもやぎ