• URLをコピーしました!

ラプンツェル

原題:Rapunzel

著者:グリム

ラプンツェル

文字数:3,755 底本発行年:1938
底本: グリム童話集
0
0
0


序章-章なし

むかしむかし夫婦者ふうふものがあって、ながあいだ小児こどもしい、しい、といいくらしておりましたが、やっとおかみさんののぞみがかなって、神様かみさまねがいをきいてくださいました。 この夫婦ふうふうち後方うしろには、ちいさなまどがあって、そのむこうに、うつくしいはな野菜やさいを一めんつくった、きれいなにわがみえるが、にわ周囲まわりにはたかへい建廻たてまわされているばかりでなく、その持主もちぬしは、おそろしいちからがあって、世間せけんからこわがられている一人ひとり魔女まじょでしたから、誰一人たれひとりなかへはいろうというものはありませんでした。

のこと、おかみさんがこのまどところって、にわながめてると、ふとうつくしいラプンツェル((菜の一種、我邦の萵苣(チシャ)に当る。))のそろった苗床なえどこにつきました。 おかみさんはあんな青々あおあおした、あたらしいべたら、どんなにうまいだろうとおもうと、もうそれがべたくって、べたくって、たまらないほどになりました。 それからは、毎日まいにち毎日まいにちことばかりかんがえていたが、いくらしがっても、とてべられないとおもうと、それがもとで、病気びょうきになって、日増ひましせて、あおくなってきます。 これをて、おっとはびっくりして、たずねました。

「おまえは、まア、うしたんだえ?」

「ああ!」とおかみさんがこたえた。 うち後方うしろにわにラプンツェルがつくってあるのよ、あれをべないと、あたしんじまうわ!」

おとこはおかみさんを可愛かわいがってたので、こころうちで、

さいなせるくらいなら、まア、どうなってもいいや、そのっててやろうよ。」

おもい、にまぎれて、へいえて、魔法まほうつかいのにわはいり、大急おおいそぎで、を一つかみいてて、おかみさんにわたすと、おかみさんはそれでサラダをこしらえて、うまそうにべました。 けれどもそのサラダのあじが、どうしてもわすれられないほどうまかったので、翌日よくじつになると、まえよりも余計よけいべたくなって、それをべなくては、られないくらいでしたから、おとこは、もう一りにかなくてはならないことになりました。

そこでまたれてから、りにきましたが、へいをおりてると、魔法まほうつかいのおんなが、まえってたので、おとこはぎょっとして、そのちすくんでしまいました。 すると魔女まじょが、おそろしいつきで、にらみつけながら、こういました。

なんだって、おまえへい乗越のりこえてて、盗賊ぬすびとのように、わたしのラプンツェルをってくのだ? そんなことをすれば、いことはいぞ。」

「ああ! どうぞ勘弁かんべんしてください!」とおとここたえた。 このんでいたしたわけではございません。 まったせっぱつまって余儀よぎなくいたしましたのです。 かないまどから、あなたさまのラプンツェルをのぞきまして、べたい、べたいとおもいつめて、ぬくらいになりましたのです。」

それをくと、魔女まじょはいくらか機嫌きげんをなおして、こういました。

「おまえうのが本当ほんとうなら、ここにあるラプンツェルを、おまえのほしいだけ、たしてあげるよ。 だが、それには、おまえのおかみさんがおとした小児こどもを、わたしにくれる約束やくそくをしなくちゃいけない。 小児こども幸福しあわせになるよ。 わたし母親ははおやのように世話せわをしてやります。」

おとこ心配しんぱいをとられて、われるとおりに約束やくそくしてしまった。 で、おかみさんがいよいよおさんをすると、魔女まじょて、そのに「ラプンツェル」というをつけて、れてってしまいました。

ラプンツェルは、世界せかい二人ふたりいくらいのうつくしい少女むすめになりました。 少女むすめが十二さいになると、魔女まじょもりなかにあるとうなかへ、少女むすめ閉籠とじこめてしまった。 そのとうは、梯子はしごければ、出口でぐちく、ただ頂上てっぺんに、ちいさなまどが一つあるぎりでした。 魔女まじょはいろうとおもときには、とうしたって、おおきなこえでこううのです。

「ラプンツェルや! ラプンツェルや!

まえ頭髪かみげておくれ!」

ラプンツェルは黄金きんばしたような、ながい、うつくしい、頭髪かみってました。 魔女まじょこえこえると、少女むすめぐに自分じぶんんだかみほどいて、まど折釘おれくぎきつけて、四十しゃくしたまでらします。 すると魔女まじょはこのかみつかまってのぼってるのです。

二三ねんって、とき、このくに王子おうじが、このもりなかを、うまとおって、このとうしたまでたことがありました。 するととうなかから、なんともいようのない、うつくしいうたこえてたので、王子おうじはじっと立停たちどまって、いていました。 それはラプンツェルが、退屈凌たいくつしのぎに、かわいらしいこえうたっているのでした。

序章-章なし
━ おわり ━  小説TOPに戻る
0
0
0
読み込み中...
ブックマーク系
サイトメニュー
シェア・ブックマーク
シェア

ラプンツェル - 情報

ラプンツェル

ラプンツェル

文字数 3,755文字

底本 グリム童話集

青空情報


底本:「グリム童話集」冨山房
   1938(昭和13)年12月12日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
入力:大久保ゆう
校正:鈴木厚司
2005年3月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:ラプンツェル

小説内ジャンプ
コントロール
設定
しおり
おすすめ書式
ページ送り
改行
文字サイズ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!