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舌切りすずめ

著者:楠山正雄

したきりすずめ - くすやま まさお

文字数:3,983 底本発行年:1983
著者リスト:
著者楠山 正雄
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序章-章なし

むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがありました。

子供こどもがないものですから、おじいさんはすずめの子を一、だいじにして、かごにれてっておきました。

ある日おじいさんはいつものように山へしばりに行って、おばあさんは井戸いどばたで洗濯せんたくをしていました。 その洗濯せんたく使つかうのりをおばあさんが台所だいどころわすれていった留守るすに、すずめの子がちょろちょろかごからあるして、のりをのこらずなめてしまいました。

おばあさんはのりをりにかえってますと、おさらの中にはきれいにのりがありませんでした。 そののりはみんなすずめがなめてしまったことがわかかると、いじのわるいおばあさんはたいへんおこって、かわいそうに、小さなすずめをつかまえて、むりに口をあかせながら、

「このしたがそんなわるさをしたのか。」

って、はさみでしたをちょんってしまいました。 そして、

「さあ、どこへでも出ていけ。」

ってはなしました。 すずめはかなしそうなこえで、「いたい、いたい。」 きながら、んでいきました。

夕方ゆうがたになって、おじいさんはしばを背負せおって、山からかえってて、

「ああくたびれた、すずめもおなかがすいたろう。 さあさあ、えさをやりましょう。」

い、かごのまえってみますと、中にはすずめはいませんでした。 おじいさんはおどろいて、

「おばあさん、おばあさん、すずめはどこへ行ったろう。」

いますと、おばあさんは、

「すずめですか、あれはわたしのだいじなのりをなめたから、したっておいしてしまいましたよ。」

とへいきなかおをしていました。

「まあ、かわいそうに。 ひどいことをするなあ。」

とおじいさんはって、がっかりしたかおをしていました。

おじいさんは、すずめがしたられてどこへ行ったか心配しんぱいでたまりませんので、あくる日は、があけるとさっそく出かけていきました。 おじいさんは道々みちみち、つえをついて、

舌切したきりすずめ、

宿やどはどこだ、

チュウ、チュウ、チュウ。」

びながら、あてもなくたずねてあるきました。 えて、山をえて、またえて、山をえて、大きなやぶのあるところへ出ました。 するとやぶの中から、

舌切したきりすずめ、

宿やどはここよ。

チュウ、チュウ、チュウ。」

というこえこえました。

序章-章なし
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舌切りすずめ - 情報

舌切りすずめ

したきりすずめ

文字数 3,983文字

著者リスト:
著者楠山 正雄

底本 日本の神話と十大昔話

青空情報


底本:「日本の神話と十大昔話」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年5月10日第1刷発行
   1992(平成4)年4月20日第14刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年8月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:舌切りすずめ

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