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かちかち山

著者:楠山正雄

かちかちやま - くすやま まさお

文字数:4,177 底本発行年:1983
著者リスト:
著者楠山 正雄
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序章-章なし

むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。 おじいさんがいつもはたけに出てはたらいていますと、うらの山から一ぴきのふるだぬきが出てきて、おじいさんがせっかく丹精たんせいをしてこしらえたはたけのものをらした上に、どんどんいしころやつちくれをおじいさんのうしろからげつけました。 おじいさんがおこってっかけますと、すばやくげて行ってしまいます。 しばらくするとまたやってて、あいかわらずいたずらをしました。 おじいさんもこまりきって、わなをかけておきますと、ある日、たぬきはとうとうそのわなにかかりました。

おじいさんはおどがってよろこびました。

「ああいい気味きみだ。 とうとうつかまえてやった。」

こうって、たぬきのあしをしばって、うちへかついでかえりました。 そして天井てんじょうのはりにぶらげて、おばあさんに、

がさないようにばんをして、ばんにわたしがかえるまでにたぬきじるをこしらえておいておくれ。」

いのこして、またはたけへ出ていきました。

たぬきがしばられてぶらげられている下で、おばあさんはうすして、とんとんむぎをついていました。 そのうち、

「ああくたびれた。」

とおばあさんはって、あせをふきました。 するとそのときまで、おとなしくぶらがっていたたぬきが、上からこえをかけました。

「もしもし、おばあさん、くたびれたらすこしお手伝てつだいをいたしましょう。 そのわりこのなわをといてください。」

「どうしてどうして、おまえなんぞに手伝てつだってもらえるものか。 なわをといてやったら、手伝てつだうどころか、すぐげてってしまうだろう。」

「いいえ、もうこうしてつかまったのですもの、いまさらげるものですか。 まあ、ためしにろしてごらんなさい。」

あんまりしつっこく、殊勝しゅしょうらしくたのむものですから、おばあさんもうかうか、たぬきの言うことをほんとうにして、なわをといてろしてやりました。 するとたぬきは、

「やれやれ。」

としばられた手足てあしをさすりました。 そして、

「どれ、わたしがついてあげましょう。」

いながら、おばあさんのきねをげて、むぎをつくふりをして、いきなりおばあさんの脳天のうてんからきねをろしますと、「きゃっ。」 というもなく、おばあさんは目をまわして、たおれてんでしまいました。

たぬきはさっそくおばあさんをお料理りょうりして、たぬきじるわりにばばあじるをこしらえて、自分じぶんはおばあさんにけて、すましたかおをしてまえすわって、おじいさんのかえりをちうけていました。

夕方ゆうがたになって、なんにもらないおじいさんは、

ばんはたぬきじるべられるな。」

おもって、一人ひとりでにこにこしながら、いそいでうちへかえってました。 するとたぬきのおばあさんはさもちかねたというように、

「おや、おじいさん、おかいんなさい。 さっきからたぬきじるをこしらえてっていましたよ。」

序章-章なし
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かちかち山 - 情報

かちかち山

かちかちやま

文字数 4,177文字

著者リスト:
著者楠山 正雄

底本 日本の神話と十大昔話

青空情報


底本:「日本の神話と十大昔話」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年5月10日第1刷発行
   1992(平成4)年4月20日第14刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年8月2日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

青空文庫:かちかち山

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