貧乏物語
著者:河上肇
びんぼうものがたり - かわかみ はじめ
文字数:105,192 底本発行年:1947
序
この物語は、最初余が、大正五年九月十一日より同年十二月二十六日にわたり、断続して
人はパンのみにて生くものにあらず、されどまたパンなくして人は生くものにあらずというが、この物語の全体を貫く著者の精神の一である。
思うに経済問題が真に人生問題の一部となり、また経済学が真に学ぶに足るの学問となるも、全くこれがためであろう。
昔は孔子のいわく、富にして求むべくんば
著者経済生活の理想化を説くや、高く向上の一路をさすに似たりといえども、彼あによくその説くところを自ら行ない得たりと言わんや。 ただ平生の志を言うのみ。 しかも読者もしその人をもってその言を捨てずんば、著者の本懐これに過ぐるはあらざるべし。
巻頭に掲ぐるところの画像は、経済学の開祖アダム・スミスの肖像である。
今や氏の永眠をさること百有余年、時勢の変に伴うて学説の改造を要するものもとより少なからずといえども、いやしくも
この物語には細目を付せず。 こは必ずしも労をいといてにはあらず、ただ読まるべくんば全編を通読されんこと、これ著者の希望なるがためである。
付録としてロイド・ジョージに関する拙文二編を収む。 一は昨年の七月執筆せしものにて、他は本年の一月稿を成せしものである。 けだし氏は真に貧乏根治の必要を理解せる大政治家の一人として、著者の平生最も尊敬するところ。 あわせ録して敬意をいたすの徴となすゆえんである。
本書の
大正六年一月二十五日
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貧乏物語 - 情報
青空情報
底本:「貧乏物語」岩波文庫、岩波書店
1947(昭和22)年9月5日第1刷発行
1965(昭和40)年10月16日第30刷改版発行
1978(昭和53)年11月10日第47刷発行
初出:貧乏物語「大阪朝日新聞」
1916(大正5)年9月11日〜12月26日
ロイド・ジョージ「大阪朝日新聞」
1916(大正5)年7月14日、1917(大正6)年1月9日〜11日
※注釈記号「*」は底本では、直前の文字の右横にルビのように付いています。
※底本で区切りに使われている「*」は注釈記号と重複するので「×」に変更しました。
※2行にわたる波括弧はけい線素片で代用しました。
※「二の二」の「ローンツリー『貧乏』縮刷版」と「ボウレイ『生計と貧乏』」の表のレイアウトを、読みやすさを優先して調整しました。
※「需要はすなわち本(と)で」は、校正に使用した第63刷の表記に従って「需要はすなわち本(もと)で」とあらためました。
※添付の画像ファイルは「貧乏物語」(弘文堂書房、大正6年3月1日発行、大正6年4月20日改訂第7版)のものを使用しました。
入力:sogo
校正:鈴木厚司
2008年4月7日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
青空文庫:貧乏物語